そうだ、不名誉なのだと気づいたときには遅かった。ありきたりな用語を使うようで、なんだか特別なものがうすれてしまいそうな落胆する気持ちを抑える。わたしは綺麗なドレスを身にまといながら何故自分がこのような役目をしなければならぬのかと考えていた。否、考える以外に他にする事が無かった。むしろ、考える以外に他に何も手に付かなかったと言ったほうが正確なのかもしれない。どうしようもない倦怠感が襲い掛かってきそうな、それでも気力だけで存在しているような、変な感覚。わたしはしんでしまうのだ、という現実感の無さ。どうでもいい、なにもかもが、どうでもいい。 せめて、あの人さえ生きていてくれればわたしは。 窓の外をのぞけば庭師の彼と目が合った。彼はわたしと目が合うと、無愛想ながらニコリと笑う。わたしもそれが嬉しくてニコリと笑う。彼の笑顔が見られただけで、わたしはこれから戦う気力が湧いてくるのだ。ありがとう、いとしい人よ。だいすきなのは、これからもこれまでもあなたただ一人だった。 きれいな植え込み、と思ったのがきっかけ。それは誰が手入れしているのかと気になった途端に、わたしはきっとずるずるとひきずられていってしまったのだろう。結ばれないことは、重々承知していた。それでも、わたしはだんだんと彼の魅力にとりつかれていってしまったのだ。引き返すなんてことは、できなかった。 綺麗、きれいね。 今日も薔薇が、綺麗に咲いている。わたしの命日にふさわしい、赤い赤い真っ赤な薔薇。 わたしは最後の幸せをかみしめる。 ああせめて、次に生まれてくるときは幸せな家庭を築けますようにと、 (そして、呼ぶのだ。あの名前を。) |