全く、本当に嫌な日だと思わざるを得ない。 そういえば今日は天中殺だったなんて、スケジュール帳を見て思い出す。本当に嫌な日だった。くそ、と小さく悪態をついて、駅のホームからしとしとと降り続いている雨をにらみつけた。そもそも事の発端はアイツのせいだ。名前なんていったっけな、そうだ。だ。 あれは今日の午後の授業だった。ガラガラと戸を開けて入ってきた教師が、開口一番に言ったのがあれだ。 「えー、今から抜き打ちテストを行う。範囲は昨日習った所までな、じゃあ配るぞー」 周りからぶうぶうと上がる不満の声を聞き流しながら問答無用とばかりにテスト用紙を配ってゆく教師を、俺は特に何も考えずに眺めていた。テストなんて別にサッカーに関係ないと思っていたからだ。昨日は特に授業を真面目に聞いていたわけではないけれど、何とかなるだろうと思っていた。しかし甘かった。 「えーなんだよ難しすぎるだろー」 「黙ってやれよー」 「うそだろー」 「ホントだぞー」 そんなどうでもいい教師と生徒のやり取りを聞きながら、俺は少し焦っていた。だってよ、こんなの習ってないぜ。あー、畜生。昨日の授業、もう少しちゃんとやっておけばよかったと後悔する。後にプリントを回すと、教師の「はじめー」という声が響いてカリカリという鉛筆の音だけになった。 で、その後。抜き打ちテストも終わりプリントが回収された後に、教師が一言。 「満点じゃない奴は追試だからな」 周りからのブーイングも無視して、「あと自習なー」と言って授業も終わっていないのに出て行ってしまった。なんという放任主義な教師だ、と思いながらため息をつく。ぎゃあぎゃあと文句を言うクラスの連中と教師が出て言って騒ぎ始めるクラスの連中を疎ましいとしか思わなかった。舌打ちをする。なんて面倒な奴らなんだ。 と、唐突に目の前に影が落ちる。 「真田君、これ」 この間のプリントなんだけれど、と彼女は俺の前に来て俺がユースの練習で休んでいた日のプリントを差し出した。 「…おう」 「それで今日のテスト」 「ああ、気にしてねぇよ」 「そ、そっか」 「用はそれだけか」 「うん」 じゃあ、と言って彼女、は自分の席へと戻った。確かアイツはクラス委員か何かだった気がする。アイツが席に戻ると周りの女子が「何あの態度!」「最低!」「がせっかく届けたのに!」「私だったら感謝しすぎて抱きつくのに!」「抱きつくのはやりすぎでしょ」「でもありがとうは言うよ、絶対!」なんてぐちぐちと言いながら、こちらを睨んでいる。 「みんな言いすぎだよ、もう」が焦りながら女子に言い聞かせるように話した。 その姿が少し可愛いな、なんて思ってしまって帰り道までずっと頭から離れなくて、もちろん満点が取れるはずも無かった抜き打ちテストは追試組みとなってしまったりもしたけれど、その姿がずっと俺の頭から離れなくなっていて。 なんなんだよ、全く。 これじゃあまるで、
(じらされてるのは俺の方)
お題::farfalla様
駅のホームで電車が来る音がぴろぴろと鳴った。(20100204) |