「ねえ、一緒にいるのって楽しいのかな」
 「楽しいから一緒にいるんじゃないの? 楽しくないなら一緒にいないでしょ」


 ぼんやりと二人掛けのラブソファに座る私が問えば、隣に我が物顔で座る彼は読んでいる本から顔を上げて不機嫌そうな顔で言った。私はむうっとふくれて彼の肩を小突く。本なんかに嫉妬するなんて少し子供っぽくて嫌だけれど、振向いてくれない彼は私といて本当に楽しいのかどうか疑問点が多すぎた。十人中十人が綺麗だと答える彼が、どうして私なんかを選んだのかも分からなかった。彼は疑問だらけだ。


 「私より可愛い女の子がいっぱい告白してくるんじゃないの」
 「まあ、他の奴はキャアキャアうるさいけれどはそういう面倒な性格じゃない。それに、俺が好きだからそういうのは関係ないでしょ」
 「たまにちょっと考えるの」
 「何を」
 「たとえば、英士が他の女の子に靡くとか実は私の事ぜんぜん好きじゃなくてただ利用してるだけなんだとか。そういうこと」


 私がそう言えば、英士は一瞬目を見開いて、クスクスと笑い始めた。私もつられてクスクスと笑う。


 「ちょっと真剣なんだってば」
 私がもう、と言いながらクスクスと笑うと英士はハハハ、と大げさに笑い始めた。一通りひいひい言って笑いが収まったころに彼は口を開く。


 「だって、おかしいでしょ。俺がそんな事するわけない。だいたい好きでもない奴と一緒にいたりするわけないし、気もあわない奴と話もしたくないから話さない。俺がこうやって気軽に話してるのは、気の合う友達とくらいだからね」
 「まあ、いいんだけどね」
 「のそういうところ、好きだよ」
 「英士ってつかみどころないよね」
 「まあね」


 そう言って彼はその端正な顔で笑った。意味の無い会話を繰り替えしながら、こうやって笑い合えるのがとても幸せ。最初告白された時は何考えてるのか分からない変な奴と思ったけれど、こうして一緒にいるとやっぱり少しずつ彼に惹かれつつある自分に気づいて笑みがこぼれる。無機質に流れてくるテレビの音が、ざわざわとざわめいていた。私はソファに深くもたれかかる。


 「そういえばサッカーの調子とか、どう?」
 「絶好調、かな」
 「そっか」
 「選抜にも選ばれたし」
 「さすが未来のスター様だね」


 私が言えば、「当たり前でしょ」と返答が返ってきて、「英士っぽい」と私は笑った。




 この時間がいつまでも続けばいいなんていうのは、ただの我侭かもしれないけれど。
 それでもそう願ってしまうのは、きっと彼の事を私が自分で思っている以上に好きだからなんだろう。












(時ならこのまま止めてあげる)















お題::farfalla様





(20100204)