不破君とわたしの関係性はよくわからない。 でも他者に依存しているという点において、不破君とわたしは依存しあっているかんけいなのかもしれない。簡単に一言でいいあらわすと俗に言うセフレ、っていうやつで体だけの関係だ。でもわたしはそうだと思っていないし、多分彼だってそうは思っていない。あくまでも俗語で分かりやすく言っただけであってそういうのではない。断じて誓ってもいいくらいに。 不破君は、不思議なひとだった。 わたしはといえば、その時いつも通り図書室でぼうっとしていたし、中学三年間で何の接点もない『あの』不破君がまさか図書室でぼうっと無益な時間を過ごしているわたしに話しかけてくるなんていう予想もしていなかった。だから、最初はとても驚いた。「おい、」と話し掛けられてから、「お前は付き合ったことはあるか」と聞かれてやっぱり驚かざるを得なかった。内容が直接的過ぎて、わたしは慌てて首を振った覚えがある。 「では、俺と付き合え」 不破君が言った言葉は無言の圧力をもっていて、わたしは気づいたら頷いていた。 後から後悔しても、まさしく後の祭りでクラスメイトには白い目でみられるし「あんなやつやめなよ」と何度友人に止められたか分からない。だけど不破君の表情がふっと緩む瞬間が、なんだかいとおしくなってしまってわたしは不破君から離れられないでいる。たぶん不破君は見た目だけなら水野君に負けず劣らずだと思うし(と言ったら水野ファンにすごい目で睨まれた)、頭だって学校創立以来の天才だし、スポーツだって万能だから絶対にライバルは多い、と思っていたのだけれど学校内では性格に『ヤヤ難アリ』というレッテルを貼られているらしく不破君の武勇伝に皆が恐怖におののき女子だけならず男子までもが彼にあまり積極的に関わろうとしないらしい。カッコいいとおもうんだけどなあ、と呟いた言葉は白い目でさけずまれる。「やっぱりは変わっている」、といわれるけれどもわたしにそんな自覚はない。 不破君がかっこいいから仕方がない。 今日も家に不破君が来る。定期的になった不破君の来訪は、わたしにとって楽しみでもあるし習慣でもある。不破君はわたしの家に来て、わたしの入れた紅茶を飲んでからシャワーを浴びる。わたしはその間ソファでごろりと横になりながらラジオをつける。今日は洋楽がたくさん流れていた。 わたしは、その中に知っている音楽があるのに気づいて少しだけ口ずさむ。かわいらしい音程のフォウクソングのようなメロディがくるくると流れていく。らーらーらー、とラジオがかわいらしく奏でるので、少しラジオに嫉妬した。ラジオの音楽は、いい。それは自分が普段聞かないような音楽が流れる事があるからで、偶然大好きな旋律に出会う事もあるし、それっきりのもある。ほとんどはそれっきりだけれど、たまたまCDショップで偶然その曲を見つけたときには偶然の重なりによる運命を感じてしまうのだ。 わたしは不破君に少しだけ運命を感じている。 といったら、なんだか可笑しいだろうか。付き合っているけれどもなんだかちぐはぐな関係。わたしはシャワーの音が止まったのに気づく。 不破君がシャワーを終えて、バスルームからでてきたらしい。
(20101001)いろいろと感化されているようです。 お題:花鹿 |