会いたい会いたいと願っても視線は交わらず、一方通行を繰り返している。それでもいいと思っていた私が、それでは嫌だと思い始めたのはいつごろからだろうか。私がこれほどまでに貴方しか見ていないのにもかかわらず、貴方が見ているのは他でもないあの子である。忌々しい、忌々しいという単語があたまのなかでぐるぐるまわる。忌々しいのは私の頭だという正論なんて棚に上げ、私は、ただその棚から牡丹餅が落ちるのを待っている。 そう、告白した所で結果は知れているのだ。 私のような不細工が、あんな綺麗な子に叶うはずも無い。その上性格まで最低ときたら、私にいいところなんてあるのだろうかと懐疑心が襲ってくる。ねえ、こっちを見て笑って。少しでいいの。でもきっと貴方が、こちらを振り返って笑ってしまったら私はもう貴方という鎖から逃げる事は出来ないのだろう。このままでいいのだ、このまま。ずっとこの距離でいてほしい。 貴方が幸せになって欲しいなんて、タテマエすぎる理由をこじつけて。私はひっそりとふたを閉じるのだ。臆病な私、なんてみじめなのだろう。こんな感情、できる事ならば持ちたくなかった。持つとしたら相手が好意を示してくれてからでも遅くないのに、なんで私のほうがいつも先なのだろう。じゃんけんはフライングした時点で負けている。あとだししてズルをしたほうが得なのだ。惚れたら負ける、なんてどの先人たちの言葉か知らないけれども古来からこういう色恋沙汰に関しては全くといっていいほどにパターンとして変化はしないのだろう。本当に大恋愛の末結びつくなんて今時そんな恋愛ドラマのような夢物語なんてありはしない。 突きつけられていくのは、ただ現実のみ。 そう、ただ重苦しいだけの存在。それが現実。 生きている意味、それすらもわからなくなるような。 そう言ってしまえば大袈裟に聞こえるかもしれない、 けれども一度経験した人にはきっと共鳴できるものが、 あるのだろう、だから失恋の歌詞の歌謡曲がヒットする。 なんと無情な事なのだろうかと嘆いた所で何もおこらず。 それこそ、無情。 彼から連絡が来る事もなければ、彼から好きだと言われる事もなければ、彼の引き締まった腕で抱きしめられる事もなければ、彼が突然家にやってくるなんて事もない。何も無いのだ。ほんとうに、何も無い。そして、これからも何もおこることはないし、私が行動を起こすなんていうことは全くない。あたって砕けるという体育会系な言葉は私の頭の辞書からは抹消され、ただただ臆病で意地汚いだけの私が胡坐をかいて居座っている。昔は純粋無垢で、白無垢のよく似合うお嫁さんになるのが夢だった笑顔の似合う女の子は、葬列に並んで鬱々とした表情をしてうつむいているだけの老け込んだ親族のよう。 私は、何もかもに疲れているのだろうか。 「ああ、面倒くさい」 いつの間にか口癖のようになった言葉を呟きながら、私は浴槽へと向かう。 湯気が火照った目頭にふれて、じわりと、 ―― 、 あふれだした。 ▲ (20100704) |