「そっか、いまU-14なんだ」
 「おう、お前は部活とかやってないのかよ」
 「あ、やってるよ」私はにこりと微笑む。「女子サッカー部」


 私と真田はレコードショップでおのおの目当ての品を買い求めた後に何も予定が無かったのでぶらぶらと近くのカフェに入る事になった。レコードショップでのかくかくしかじかな話はまあさておき、ここまで来る最中にもうすぐサッカーの東京選抜があるということをちらりと聞いた。東京選抜かあ、羨ましいなあなんて私が言えば彼は「だろ?」なんて言って得意げに胸をはって笑った。ああ変わってないなあなんて思って私もつられながら笑った。中学生の私たちにもお値打ちそうなカフェに入って私はダージリンティーとストロベリーチーズケーキを頼んで真田はここまで来てりんごジュースとサンドイッチを頼んでいた。もちろん真田の頼んだサンドイッチは卵サンドだというあたりユースの時から全く変わっていなくて思わず笑いそうになってしまってこらえる。
 私はダージリンティーのオシャレな香りに癒されながらストロベリーチーズケーキをフォークで一口分だけ取りわけ、落とさないように気をつけながら口へ運んだ。それにしてもU-14はさぞかし楽しいのだろうなあという私の羨望のまなざしに気づいたのか気づいていないのか、かわいく三角形に斬られている香ばしいや黄色の卵サンドにかぶりつきながら真田がこちらを向いた。卵が落ちそうで落ちない微妙なバランスで卵サンドが皿に戻る。


 「女子サッカー部か、すげぇじゃねーかよ」
 「まだ人数は少ないけどみんな凄く仲良しだしいい人ばっかりだよ」
 私がにこりと笑うと真田が急に少しどもりながら「あ、まあ、よかったじゃねーか」なんて言うものだから少し面白くて笑ってしまった。
 「変わってないなあ」
 ほんと、前会った時から変わったのが背格好だけのように見えてくるものだから人の中身って面白いなあなんて思ったりして。さすが真田だと思って私はクスクスと笑った。昔から自分の意見は言えるくせに肝心な所で駄目駄目な返事しか返せなかったり、どこか抜けている所なんてそのままだ。


 「笑うなよ」
 少し冗談交じりにむっとして、ふくれっつらをする真田。私はその様子がまた昔と変わっていない事に気づいてまたクスクスと笑う。
 「久しぶりに会ったけど全然変わってなくて安心した」
 「俺が急に変わったら俺じゃねーだろ」
 「あ、それもそうだね」クスクスと笑いながら、私はふと思い出す。「そういえば、郭と若菜は元気?」
 「あ、お、おう。あいつらも全然変わってねーから」
 「そっかー、懐かしいな」
 「今度練習来たらいいんじゃねーの、見学くらいならさせてくれると思うぜ」
 「うーん、嬉しいんだけどな」私はストロベリーチーズケーキを頬張る。「でも、きっと見たらやりたくなっちゃうから」
 「やめるのか?」
 真田はサンドイッチをもぐもぐと食べている。私は少し間を空けて右手でダージリンティーのカップを持ち上げ、ふうふうと冷まして飲んだ。
 「今回はやめとく、でも暇な時に試合とかふらっと行くかもしれない」
 「きっと英士も結人も喜ぶぜ! 来る時はちゃんと言えよな」
 「うん、メールか何かで連絡する」私はダージリンティーをまた一口。


 最後の一口のストロベリーチーズケーキを食べ終わると真田は既にサンドイッチを食べ終わっていて、更に言えばりんごジュースもほとんどが彼の胃の中に納まっていた。私のダージリンはまだ半分ほど残っている。二・三口飲むと真田が何事かを店内においてある紙ナフキンに書いて私に差し出しながら口を開いた。


 「これさ、アドレスだから」
 「あ、じゃあ私も書かなきゃ」
 私も紙ナフキンを一枚取り出してさらさらとそれに筆を走らせる。少しぶよぶよで歪な字になってしまったが、なんとか読める字にはなっている。よし、コレでいいなんて思いながら彼にほいっと差し出した。紙ナフキンを交換する二人なんて傍から見たらすさまじくおかしい二人組みに見えた事に違いは無いように思えるが、きっとその思想には間違いないだろう。店内の席に座ったものの、店内の人の視線や見せの外を歩いていく通行人の目が少し痛いような被害妄想。
 のんびりと会計を済ませてお金を払う。


 「じゃ、また試合に来いよ」
 「ばいばーい、暇が会ったら行くよ」


 そんな会話を最後にして、私は帰路についた。



















(ストロベリーチーズケーキ)





あまいあまいチーズケーキの罠はいかがですか?

























(20100101)