夕子ちゃんのおかげで期末テスト平均点以上取らなきゃいけなくなってしまった女子サッカー部一行は上条の期末テスト対策をすることになった。どうやら点数の低いらしい上条には私と小島とで集中指導をする事になったわけだが、果たして私と小島で大丈夫なのか少し心配になった。小島は何日か偵察に行く予定なので小島がいない分は私一人で担当する事になる。まあ今回のテスト範囲は歴史上の人物の名前と年表を憶えて理科の用語を覚えて適当に全教科のノートを見直してしまえば何とかなるような範囲なのでいつも通りだろう。
 私のノートをまとめながら上条に教えてしまえばきっと彼女も理解してくれるはずだと思う。…多分ね。


 さて私の家は一般家庭のそれに比べてそれなりの広さはあるものの家庭内環境がゴタゴタなので上条の家にお邪魔する事になったわけだが、これがどこかの豪邸並みに大きかったのにはやはり驚いた。


 「さすが上条」
 「大きいわね」
 「まあ、一般家庭の比じゃないわ」


 まず門が大きかった。2・3メートルありそうな高さの門が幅5・6メートルありその周りを石塀が囲んでいる。中は洋風なつくりの庭が広がっており石畳が屋敷のような家に向かって敷かれている。とりあえず一言だけ観想を言うとするならば、豪華絢爛な造りの建物だとでも表現しようか。中に入ってみれば、さすが私立に行こうとしただけはあるような豪華な西洋造りのお部屋が広がっていた。エントランスが広がってちょっとしたパーティみたいなものがひらけそうである。ホテルにありそうなカーペットの敷かれた階段を上り、私たちは上条の部屋へとお邪魔する。


 「へぇー、広い部屋ね」
 「ふん、まあね」


 小島が部屋を見て感嘆の声を上げるのを聞いて、上条が鼻で笑ったような返答を返す。私も小島と同じように「広−い」と言いながら上条の部屋の中へと足を踏み入れた。ちょうど四人掛けのテーブルが用意されている。上条がテーブルに据え付けられている椅子に座ってぽんぽんと机を叩いた。


 「そこに座って」
 「うん」
 私が頷いて上条の向かいの席に座る。小島が私の左隣に座った。で、上条が開始早々に一言。
 「何から勉強するのかしら?」
 「うーん、じゃあノート見せて」少し悩んで私。大体その人のノートを見れば学力がわかると言う話はよく聞くから上条がどれだけ出来るのか確かめてみれば、何処から教えればいいのか分かるからだ。上条は少し戸惑ったものの渋々ノートを取り出して私に渡す。
 

 「う、」これは。「重症」
 ちゃんと書いてはある、しかし理解できていないことが分かりやすく見えるノートだった。黒板に書いてあることがそのまま書いてあるだけの普通のノートだった。そして分かりにくい重大なポイントがひとつ。
 「先生の文字がそのまま写してある」
 「普通でしょ!?」
 私の言葉に反論するように机をばん、と叩く上条。しかし本当の事なのだから仕方がない。私のノートを上条に渡す。


 「あ、」上条が驚く。「見やすいわ」
 「社会の先生のまとめ方って、見づらいからノート見てるとわかんなくなっちゃうでしょ」
 「そうなのよ」うんうんと頷く上条。私も頷く。
 「自分で考えてまとめれば、先生の言ってる事が理解できて憶えられる。一石二鳥なの」
 「…でも! うまくまとめられないわよ、そんなの」
 「だから私が来たんだよ」
 説明する私。上条と小島が「なるほど」と頷く。




 ノートをまとめ直すことからはじめ、はや二時間。上条宅のご両親が気を使ってくれてケーキや紅茶を出してくれたりして、お茶をのんびりと楽しみながら社会のテスト範囲のテスト勉強が終わろうとしていた。とりあえずひと段落した所で、はぁーと皆でのびをする。上条のテスト勉強改善計画はとりあえず順調だ。


 「そういえばさん」
 「なあに?」私は紅茶を置いて答える。
 「数学の公式も教えてもらおうと思ったのですけれど、それより」上条がもごもごと口ごもる。「気になる事がひとつありますのよ」

 「うん」
 「さん、どうして不破君が平気なのかしら?」
 上条が不審な目でこちらを見ている。


 「え? 普通じゃないの」
 きょとん、とした私の返答に小島と上条の表情が強張ったのを少し感じた。そういえば不破君は別名クラッシャーとかなんとか言われていたような気がする。なにかまずい事を言っただろうか、たぶんおそらく推測にすぎないけれども私は墓穴を掘ってしまったのだろう。小島も面白いとばかりに議論に参加してきた。


 「そういえば、不破と席も隣同士だし」
 「それは関係ないんじゃない? くじ運の問題じゃないのかな」私の反論。
 「帰り際と休憩中に、あの不破君と仲良さげに話しているわ」と、上条。
 「この間の雨の日なんて、ったら不破に家まで送ってもらってたでしょ」と、小島。
 「怪しいわ!」と、上条がにやりと何かの獲物を見つけたような目でこちらを見ている。
 「前々から不破と怪しいと思っていたのよ」小島が面白いおもちゃを見つけたような目でこちらを見ている。
 確かにクラス内でも不破君と進んで喋ろうとする人は私とかそういう人だし、春先で色々と生徒同士で人間関係で問題を起こしている不破君だからこそ昨今の私と不破君の関係にただならぬ何かを感じ取っている人も少なくないと言う事だろうか。これは完璧に私は墓穴を掘ったらしい。私は絶体絶命のピンチで蛇に睨まれた蛙状態である。

 「あ、怪しくないよ! 普通だって」ぶんぶんと首を振って否定する私。
 「そうね、不破と恋人なら普通でしょうね。、焦って否定する所をみると怪しさ倍増よ」
 「あら、奇遇ね小島さん。悔しいけど、この際ばかりは同意させていただきますわ」
 「きゃー、ちょっと待ってってば二人とも!」二人の気迫に押されて私は身を縮めた。「穏便にね、穏便に?」
 「あーら、聞こえない聞こえない」と、小島。「ほんとは好きなんでしょ不破のこと。どこがいいのよあんな奴」
 「その通りだわ、さんだったらもっとカッコいい人がホイホイ釣れそうじゃありませんこと?」
 「そ、そんなことないよ。不破君はいい人だよ。あ、あと、ホイホイとかないよ」
 「へーえ、。あのクラッシャー不破のこといい奴なんていう人風祭意外に見た事がないわよ」
 「これはますます調査の必要性がでてきましたわ、ホホホホホ」
 「周辺調査が必要ね、協力してくれるかしら麻衣子?」
 「気に食わないけれど、仕方が無いわ。協力してもよくってよ」
 「そうと決まれば作戦決行ね! 明日からガンガン行くわよ」


 「えええええー!?」
 私の明日は前途多難です。












(机上の空論)





そんな事を言われてしまえば、肯定せざるを得ない。

























女の子が集まればきっとこんな話になるはず(笑(20091225)