私は致命的な間違いを犯してしまったんじゃないかと不安になる時が時々ある。まあ確かに人間として確実に絶対的に合っていると言い切れるのは問題集に書いてある答えくらいのものだけど突き詰めていけばそれさえもただのこじつけに思えてくるから、とても不思議だ。なんとかの預言者の予言とかなんとか言うけれど予言を発見したところで、後付けで理由を考えていたらそれは後からこじつけただけの事実に過ぎないし、かといって先にこじつけておいて事が起こらなかったというとその預言者に対する期待度はガクンと大幅に下がる事になる。確かに注目度は高まるかもしれないけれど。要するになんだか胡散臭い。


 歴史の授業の中で私はぼんやりとそんな事を考えていた。世界の昔の情勢なんて古文書に書いてあることを何となくこれじゃないかなんてテキトウに当てはめているような少し曖昧な表現。そんな所を見ると、やっぱりここの辺りは現代の人間には理解できない高尚な技術が使われているんじゃないかと思いきや実は考えていなかっただけで至極単純な仕組みかもしれない。そんな事は想像するだけにとどまっている私。特にたいしたことも出来ないけれど、こういう想像が限りないくらい好きだ。だからきっとこういう事が話せる不破君が好きなんだろうなんて、ぼんやりとナポレオンの写真を見る。ナポレオンはこの写真のポーズの後、自分のポーズに酔いすぎて転ぶに一票。


 「それじゃあ次回はこの次のページから」


 先生の終わりの言葉を合図に、起立・礼・着席という規則的な挨拶が繰り返される。
 終わったー、と思いながらのびをすると廊下に出ようとしていた上条と目が合った。上条が近寄ってくる。何事だろうと伸びをしていた腕をゆっくり下ろすと上条が私の手首を掴んでつかつかと廊下に引っ張り出した。私は何かしたのかなと思って考えて見ると、上条に関わった事は数少ないのではないかと思えるほどで特に敵意は送っていないはずだと自負している。否、送っていた憶えもないのでそのせいで引っ張られてきたとしたらこじつけにもほどがある。
 そんな上条の口から飛び出してきたのは小島についてのことだった。


 「さん、小島さんと仲がいいようね?」
 「うん」
 比較的、小島とはよく話すので恐らくいい友人だろう。
 「敵方のあなたに言うのもアレな話ですが学校のアイドルといえば私、上条麻衣子ひとりで十分だと思いませんこと?」
 「うーん、やきもち?」私が言うと、上条が眉を引き攣らせてピクピクと痙攣させている。どうやら少し違ったらしい。
 「…何がどうなってやきもちなのか電波を受信しているようなアナタの思考回路なんて分かりませんが、…短い話あの小島有希だけには絶対に負けたくないのよ。ズバリ私があなたに『小島さんについて』聞いてあげているのは、アナタなら私が小島さんに勝つ方法を知っていると思ったからなのですわ」
 「そっかー」


 とりあえず上条はライバルとして小島を見ていて、小島に勝ちたいと思っている様子だということまでは分かった。だとしたらどうすればいいんだろうと考えて視界の片隅に入ったのが『女子サッカー部募集』という張り紙。あ、あれならいいんじゃないかな、と思って上条のほうを見る。張り紙を右手で指差すと上条が張り紙の存在に気づいた。


 「あれで勝負を挑んでみたらいいんじゃないかな?」
 「“さっかー”?」いかにも嫌、という感じで嫌悪感丸出しの上条。「なんで私がそんな泥臭いスポーツを…」
 「小島さん、あれなら上条さんと勝負してくれると思うよ」
 「わかったわ、その言葉に嘘は無いわね!」
 「無いよ」
 「待ってなさいよ小島有希! 必ず私が一番になってみせるんだから!」


 「頑張ってね」と言うと「あなたにだって負けませんわ」なんて言われてしまった。
 これでほんとに良かったのかななんて思いながら、私はとりあえずチャイムの音と共に教室へと戻る。












(フェイタルエラー)



























それにしても上条さんは可愛いと思います。(20091224)