ずっと一緒だったと思っていたがそれは俺の錯覚でしかなかったのかもしれない。痛みを分け合ってくれる存在としていられるならよかったのかもしれない。久しぶりに会ったはとても可愛くなっていたと妹たちがはしゃいでいたのが、子供の錯覚ではないことくらい俺だって分かっているはずだった。ずっと俺だけを頼りにして欲しいと思っていた俺の気持ちなんてきっと分かっていないのだろう彼女を攻めるつもりは無い。
 だけど、俺の気持ちに少しでも気づいてくれればなんて甘い考えを持っていた俺が悪かったのかもしれない。俺が思いを打ち明けた所での想いを壊してしまうのならば、俺は進んで俺の気持ちに終止符を打とう。ボストンバックを部屋の隅に置いて、俺はキッチンへと戻る。

 「、」俺はキッチンで大根をいちょう切りにしているに軽い調子でカマをかけた。「お前好きな奴でも出来たのか」
 「え、えええいいないよ、どどどどうしたの急に」
 動揺した様子、そして泳ぎ始める瞳で少し疑問は確信へと近づいていく。何処の誰かは知らないが、それでもいるのは確か。

 「分かやすすぎるぞ」ハハハ、と冗談交じりにからかう。
 彼女は包丁を置いて、「もう!」とむくれる。
 「切れたか、野菜」とキッチンに行ってまな板と対峙している彼女に近づけば、「後ちょっとだよー」と言いながら彼女は大根を切る作業に戻る。


 先ほどまで気づかなかったが、彼女の艶やかで綺麗な髪に目が留まる。肩口までの黒髪は流れるような滑らかさで、思わず手を伸ばしそうになって手を止める。行き場をなくした手を元の位置まで戻す。ほんとに綺麗になりやがって、これじゃきっと学校でも言い寄られるんだろうななんて思った瞬間にその考えを振り払った。
 あー、俺何考えてるんだ、馬鹿な考えはよせよ。
 俺は鍋にだしを入れてカップで水を量って入れる。今日は大根と豚肉の煮物とレバニラ炒めを作る予定だ。が来ると分かっていたらもう少し気合入れたのにな、なんて今思ってもしかたねぇよな。




 「あー姉がお料理してる!」
 「ほんとだー、お兄と並んでフーフみたい」
 「お前らなぁ…」


 きゃあきゃあと騒ぐ妹たちを冗談交じりに一蹴する。奴らは俺の言葉をきくとふざけてきゃーと言いながらリビングのソファに飛び乗った。全く無邪気なんだよな、とふと思う。本当にそんな関係になれるならなんていう淡い期待も願望もとっくの昔に捨てていたはずだったのに今になってその感情がこみ上げてくるのを感じると、自分がとても情けない。ほんとに俺、情けねェよな。


 「お兄が怒ったー!」
 「逃げろー」


 そんな事を言いながら背もたれから少し顔を出してこちらの様子を伺っている妹たちは、まだ世間の汚さとかそういうもんとはほぼ無縁で過ごしている。そんな時期がずっと続けばいいのになんて甘い考えしか持っていない自分がいた、無理だと分かっていてもそうあってほしい。俺が間反対だったから。そんな事をぼんやりと考えていれば、もう既には必要な作業をほとんど終えていた。レバニラ炒めもいつの間にか炒めてあり、あとは余熱で大丈夫というところまで出来上がっていた。

 「よし、後は煮こむだけだよ」

 がそういうと妹たちが「楽しみー」と口々に声を上げる。が手を洗って妹たちの所に寄っていく。
 テレビ番組を見ながらきゃあきゃあとはしゃいでいる彼女たちを見て、この時間がずっと続けばいいのになんて淡い期待を描きながら俺は手をあらってソファに向かった。












(自惚れさせてくれ)






























この新婚のような似ていない黒川さんをみんなどうにかしてくれ。(20091206)