「
 「なあに?」
 「先日の世論調査とその結果についてどう思う」



 何度と無く繰り返された経済学の話に引き続いて今度は世論調査か、と思いながら新聞を読んでいて良かったとつくづく思った。私はそうだなあ、と少し考えてから返答に使えそうな言葉を自分の頭の中から抜粋してふるいにかけて選別し始めた。最近、授業が終わって帰りのHRまでのしばらくの間、不破君は良い話相手を見つけたと言わんばかりに私に政治経済の話を振ってくる。なので私の中で無意識のうちに政治経済の議論をする場が家庭より学校へと広がりつつあった。
 世間に目を向けることは悪くは無い、むしろ良いことだと思う。しかし近年の中学生が政治経済について何も考えてないのにアイツはだめだとか俗世間のニュースおよびメディア媒体に自分の意見を流されてしまっているのが少しモノ悲しくも感じる。しかし、そもそもニュースで取り上げられている中学生なんて何も考えていない奴らばかりだから(おそらく番組的にそのほうが面白いから使っているんだろうけれども)、まともに考えている中学生が全くいないなんてそんな結論に達するわけで。でもそのせいで世間の大人たちは中学生に対して、なんと嘆かわしい事かなどと嘆いているので、何と言うかもう日本のメディア報道の恐ろしさに私は恐怖すら感じてしまう。一種の洗脳だ。日本の未来がどうなるのか先行きは不安だ。


 さて、本題に戻ろう。


 「やっぱり、あの法案がよくなかったから与党のA政党の人気が落ちたんだと思うよ。法案だけなら野党のN政党のほうが無駄の無い雰囲気がして世間的な目で見たらN政党のほうが有利。でも今この法案を実行したところで結局のところ税金が無駄にかかるだけで、経済効果は見られず今現在の日本の財政的には良くない」
 「ふむ、まあそんなところか。俺としては、もうすこし野党であるB党の票が与党であるC党に流れると予想していたが、二大与党に今回の場合は特に票があつまらなかったせいで票が割れたように見えたな」
 「うん、それは分かるかもしれない。でもB党って党首の人が予算的に見て毎回妥当な案を出すから根強い信者がいるっぽい感じなんだよね。だからといってC党の党首のカリスマ性には及ばないから、ハッタリだけのC党の方が与党になっちゃうんだよ。なんだか世間って無情な感じがするなあ」


 私が残念だ、と言うようにため息をつくと不破君は私の頭をぽんと軽く叩いた。


 「世間なんてものはいつも祭りあげて突き落とすのが常だ。今さら何を気に病む必要がある、お前が何か悪い事をした訳でも無い」
 「でもね、なんだかやるせないんだよ」
 「何故だ」不破君は首をかしげた。
 「ほら、だって努力して法案を考えた人たちが理不尽な法案に打ち破れていくって、それってどうかと思うよ」
 「世論とはそんなものだ」
 「そうだけど、もう少し改善の余地があるんじゃないかと思って」
 「ふむ、まあ一理あるな。しかし世論は世論だ、無作為に選ばれて投票しているだけにすぎん」


 その一言に、まあね、と私が短く答えたところで先生が入ってきた。
 今回の談義はこれで終わりかと思うと少し物悲しいというか、なんだか寂しいようなきもちにもなるけれどまあ仕方の無い事で。前を向く不破君の背中を眺めながら、それでも以前よりは少し前進したのかな、なんて想いあがりかもしれないけれど。それでも私がもし彼に対して淡い『恋心』なんて俗物的な感情を抱いているのだとしたら、私は一体どうすれば良いのかなんて答えの無い問いにひたすら思いを馳せる。
 だって、そんな、告白だなんて勇気も無い。ただの女の子だからできることも限られてくるし、まず初めに何をすれば良いのかも分からないし、何か行動したところでこの関係に何かが起こるなんて考えられない。だから、まだこのまま。この関係を保っていたい。




 可能性は無きにしも非ず。
 されど乙女行動に至らず。












(可能性のはなし)






























それはやはり、なくもない話。(20091022)