どくんどくんと心臓がはねるのをは抑えられずにいた。が社会に出てからというもの、社交パーティというものはご無沙汰していた事だった。非常に面倒くさいものだからできるだけ出られないようにわざわざ会社の予定をずらしてまでパーティの日にちを予定でつぶしてきた結果として、社交パーティのご縁がご無沙汰なのは当たり前の事で。今回は一生の不覚と言うか、母親がもう結婚しろ孫つくれだのまだ入社が決まったばかりだと言うのにせわしなく言っていたその発言を全て無視していた結果として無理やり強制送還された形に近い。確かに世継ぎが欲しいとかそういうのは分かるのだけれども、社交パーティという名のお見合い会場のようなところに成人してからは絶対に行くまいときめていたとしてはとても気が乗らなかった。



 「つまらなさそうな顔をしているね、どうしたんだい?」
 「キースさん」



 いつからそこに? なんて問いかけに、さっき君が見えたからだよ。なんて返答が返ってくる。この場にが来てからというもの、ずっともやもやとしたきもちが胸の中に渦を巻いていたのも事実だった。この時ばかりはすぐに顔に表情が出てしまう事を呪わざるを得ない。はずっとあの人の事を考えていたようなもやもやとした複雑な気持になる。胸が締め付けられるように、不安で心細い。どうしてだろうかは分からないけれども、なぜかあの人はパーティに来ないしなんていう甘ったれた理由がの頭の中でぐるぐると渦を巻いていた。



 「せっかくのパーティが台無しになってしまうよ」
 「そうなんですが……どうも」



 楽しめなくてと尻すぼみに遠慮がちに言う彼女はこのまま、いつも見切れているヒーローに届けてしまえばいいのだろうかとキースは思う。きっと彼も、ドレスアップしてかわいらしい彼女にときめいてくれるはずだった。キースはさりげなく腕時計を確認する。確かまだこの時間はトレーニングをしている人も多いだろう。彼女も浮かない顔をしていることだし、これはきっと折紙君……いや、イワン君も。とキースは結論に至る。



 「よし、ではエスケープだ!」
 「え……あ、……へ?」
 「失礼する、そして失礼しよう!」



 キースがの手を軽やかにとり、出口へといざなう。遠慮せずについてくるといい、なんてキースが高らかに笑う。はさりげなくこちらに歩調を合わせながら早足でどんどん進んでいくキースにひきずられるように会場を出た。もちろん、そういう誤解を存分にされただろうから後での弁解はとても大変だろうとはため息をつく。幼いころからキースは友人でヒーロー関係の仕事に就いたのは彼のおかげだと言っても過言ではないものだったけれども、この彼が自分でよかれと思ってやっていると思われるくらいによく起こす突発的な行動は幼いころからどうしても予測不可能な面があった。はキースの呼んだタクシーに乗り込む。キースが行先を告げると、タクシーはぶんぶんと動き始めた。










(20110818|×|わたしのためののばら)勝手な捏造:スカイハイぼんぼんだよね、っていう妄想。