「いいなぁ、ブルーローズがいたら電気代がとても浮くのに!」
 「おおお、若くてセクシーでかわいいし!」
 「冷蔵庫もクーラーも扇風機だっていらないかもしれない!」
 「涼しそうだよねェ、コスチュームもつれない態度も」



 口々に言いたい放題言い始めるヘリペリデスファイナンスのメカニック専門部署の社員たち。あんな可愛い子がわが社のヒーローなら云々とさまざまな持論を繰り広げ熱弁を始める。そんな中、べしゃり、と何かがつぶれたような音が部署に響く。またか、と言ったような冷たい視線。もはやお決まりなパターンなので、気にも留めない者も多くなりつつある。十数人程度のメカニック部署内での入社一年目の新人社員は今日もいつも通りの日常を送っている。日に少なくとも一度や二度は書類をぶちまける彼女だが彼女の実力はなかなかである。ただし、足元には不注意な事が多いのが玉にキズというところだろうか。



 「ちゃんはよく転ぶNEXTの力でも持っているのかい?」



 気づけば部長が目の前で屈んでいて、が屈んだまま顔を上げればばっちりと目が合った。その間も書類を順番に拾い集めていく。今回はステープラで書類の端を止めてあるのでばしゃあ、と書類が崩れ落ちても何百部もバラバラになって泣きながら順番を直すなんてことは無いから安心だった。そもそも書類を持ったまま転ばなければいいだけのはなしなのだけれども、恐らくにはそれは無理だろうと部署内の全員が口をそろえて言うくらいには日常的な出来事だった。



 「ふおおお、部長すみませ……! 気をつけてはいるのですが!」



 気づいたは平謝りよろしくぺこぺこと頭を下げる。部長はあまり気にしていないらしく、カッカッカと笑い声をあげて「そんなことはちゃん気にしなくていいんだよ、いつも通りだからね」とメガネを押し上げた。はかあっと自分の顔に熱が集まるのを嫌でも感じる。それを見た部長がまたカッカッカと笑い声をあげた。社員たちは和やかな空気の中でカタカタとパソコンを打つ手を休めずにその会話を聞きながら吹き出したり、くすくすと笑いをこらえて各々過ごしている。



 「そのうち力が発動したらドジッ子で売り出せるレベルだよね君は」
 「そそんなことないです、そもそもテレビに出られるようなものじゃないですし」
 「ま、大丈夫。君は見たところ普通だから。NEXTじゃないから。…もったいないねぇドジっ子ヒーローとかかわいいんだけどねぇ」
 「えぇ! や、やめてくださいよお」



 必死になってなってもいないNEXTの能力を考えてほいほいとスーツの提案を始める部長に、いやです、やめてくださいよおと本気で泣き出しそうな。からかって楽しんでいるだけの部長だが、の反応がいちいち本気で楽しすぎるせいかカッカッカという妙な笑い声は収まるところを知らない。そしてそのやりとりにクスクスと笑いを堪えている社員も減らなかった。










(20110818|×|わたしのためののばら)はかどる! そしてはかどる! 本日8本目!