「春と言えば?」
 「桜」



 同期の彼女に声をかけられて、はぁ、と盛大なため息をつかれてしまうがは間違ったことは発言していないはずだと自分の発言について考える。しかしながらがうんうんと考えているうちに、桜の花のデザインを和風にして今度メカデザインの方にもちかけてみれば折紙サイクロンの和風度も上がり広告にもなるかもしれない。と考えがひらめきへと脱線しまうところがもはやメカニックと言う名の職業病なのかもしれない。今度そうしようとうきうきしているをよそに、同期である彼女はかわいらしい外見に似合わずはぁ、末期だわと嫌味を込めてため息をついた。



 「ため息ばかりでは幸せが逃げるよ、スマイルスマイル!」
 「あんたのせいよ、あんたの」
 「私? ねぇどうして?」



 チッチッチ、と右手人差し指を横に振りながら同期は「駄目! そういう仕事に結び付けるのはダメ! これはあくまでもプライベートな質問なの、だから答えて春は何する?」と言いながら、ぐいっと顔をに近づける。は視線を泳がせながら、「ええと、」としどろもどろに答えを濁す。日本人特有のアレだった。



 「もう! ハッキリしなさいよ!」
 「そう言われても……!」



 春、はる、ハル。はぼんやりと考える。(柏餅、かぶと、端午の節句、それから日本の入学式、あとは白いワンピース、花の芽吹き、おいしいものの旬、山菜、天ぷら……はぁお腹空いてきたなぁ……何か食べたいなぁ……)






 「今何考えてたの?」
 「はっ、いやなにも……」
 「はぁ、どうせ食べ物の事でしょ。ほら、よだれでてるよ」
 「……! ほおおそんなこと、そんなことないよ!」
 「口元拭きながら言っても説得力ゼロだからね」



 (ちょっとだけ、ちょっとだけイワン君と一緒に食べられたらって思っていたことは、内緒なのです)










(20110818|×|わたしのためののばら)そんなこんなでイワン君が不在