は今や部署内のマスコットとして駆り出されることが多かった。通常の仕事もこなす、そして商談のおともに駆り出される。そんな多忙なを、イワンは心配していた。杞憂かも知れない、でも目の下の隈はごまかしきれていないことが多かった。新人社員なのにそんなに駆り出されることにはわけがある事は知っている。彼女は顔が通るらしく、要するにまあコネのようなものらしい。顔パスで上層部にかけ合えるような人材なのだから、仕方の無い事なのかもしれないが、彼女の疲れは顕著に顔に出ていた。



 「元気かな…」
 イワンがぼんやりと呟く。
 「誰がよ?」



 「……えっ」
 「あなたが言ったんじゃない!」
 「そぉーねぇ、悩ましげだったわよ」



 ぼんやりとランニングマシーンを走りながら呟いてしまった言葉を、あまり聞かれたくない人に聞かれてしまったらしい。彼女たち(と言ってもいいのだろうか怪しい)は誰だ誰だとイワンに詰め寄る。「あ、ええと、あの……」とごまかしながら視線を泳がせると、コレね、とネイサンが小指をだした。カリーナがきゃあきゃあとはしゃぐ。



 「え、そんなこと……!」



 「嘘ね、顔が物語ってるわよ。あなたの会社のちゃん」
 「え、なんで知って……! って……あの!」



 イワンの声も聞かず、彼女たちの話は続く。火が付いたら最後、止まることを知らない。



 「おとというちの会社にも来たのよ、メカニックの大和撫子」
 「ちゃん? 大和撫子? もしかしてすっごい可愛い子なの?」
 「そーそ、おしとやかでふんわりしてる日本美人ってトコロね」
 「へぇー、折り紙サイクロンが社内恋愛ねぇ」
 「そうねぇ、折り紙って奥手そうなのにやることはやってるのよね」



 「ちょ、彼女とはそういう関係じゃ……!」
 「じゃあどうなのよ、好きなんでしょ? 付き合ってるんじゃないの? 写真は?」



 どうしてこうも話が飛躍するのだろうか。イワンが矢のように降ってくるカリーナの質問攻めにはっきりとした回答をできずにあたふたとしていれば、彼女たちは自分たちの持論を勝手に展開していく。そして飛躍する。そして残りのヒーローメンバーがぞろぞろとトレーニングルームへと入ってくる。



 「おー、お疲れさーん……って何してんだよ、折紙が死にそうな顔になってんぞ」










(20110818|×|わたしのためののばら)きょうも立派に台詞ごと見切れるぜ!