べしゃり、と音を立てて転んでいる高校生くらいに見える少女がいた。彼女が転ぶと、部署の人間はまたか、というように彼女からまた視線を書類へと戻す。あいたたたー、と頭を押さえながら半身を起すと先ほどまで彼女に抱えられていた書類は見事に床に散らばっている。ああっまたやっちゃった、と彼女が嘆き声をあげる。部署の人間はこの場合何パターンかの行動をするものに分かれる。ため息をつくかそれぞれの業務に戻るか、くすくすと笑うかといった反応、そして今回はもう一つ別の声があった。



 「ねぇ、大丈夫?」
 「すいませんっ! 私のミスでこんなことになってしまって他の人にも迷惑をかけてしまって本当にすいません」  一生懸命な彼女はメカニックのプログラマの試用期間を終えて正式に社員として登録された正社員である。ぺこぺこと頭を下げながら書類をかきあつめている様子はとても初々しい。日本人形によくある黒くて綺麗な髪をしている彼女は、部署内ではよく目立った。日系の血をひいているのだろうか、その肌の色も漆黒の目の色もシュテルンビルトには珍しいものだった。



 声をかけた人物が全く動いていないことに気付いた彼女は、書類を集める手を休めないままにしながら顔を上げてかくんと首をかしげる。



 「ええと、どうかしましたか? ……い、いえ、あの、その、私が言う事でもないのかもしれないですけれどもっ……すいません私がウスノロなばかりに、このような失態ばかりで……申し訳ありませ……あうぅ」



 「あ、ああ、僕こそぼーっとしていてすまないでござる…! 手伝うよ…!」
 「あ、ありがとうございま、す」
 「…どういたしまして」






 拾い集める最中、わずかながら手が触れる。お互いに「あ」っと声を上げてひらあやまりのようなすみませんと言う言葉を紡ぐ。やがてとんとん、と彼女が書類のふちを床をつかって整える。書類を差し出せば、彼女はありがとうと笑った。



 少しだけ触れた その体温は わずかにあたたかくて










(20110818|×|わたしのためののばら)おりがみスタート!