ジャスティンさんと知り合ってから数か月。こんなに死神様を崇高に崇め奉る人を私は初めて見た。薄い興味なのかもしれない、きっかけなんてそんなものだったのかもしれない。人に抱く興味を思い出させてくれた、近しい存在。私はぐるぐると考えていた。彼は人間を平等に愛してくれている、でもそれは決して勘違いしてはいけないもので。それでも勘違いせざるを得ない私に彼は慈悲深く優しい眼差しを向けるのだ。 道路でさめざめと泣く私を、どうして泣いているのですかと声をかけてくれたのが彼だった。大音量で聞いているであろうイヤホンから爆音がごうごうと流れているからだろう、彼は少し大きな声で私に言った。私は顔を上げれば、神父様のような恰好の青い目の彼がいた。それだけ。そう、それだけなんだ。そこで私が一目惚れしてしまってシスターの格好をしながら彼にちょこちょことついていくような立場になってしまったりしたなど、それは私のわがままに過ぎないこと。 「どうかしましたか?」 ジャスティンさんの言葉に私は首を振る。「いいえ」 「そうですか。でも鏡を見てください、また浮かない顔をしていますよ」 「気をつけます」 この人は時々掴めない人だと、そう想う。掴みどころがみあたらないというか他人に付け入る隙を見せない。私は音漏れの激しい彼の隣を歩く程度のしがない人間でしかない。誰でもこの位置を取ろうと思えばとれたし取られる可能性だってたくさんあったけれども数奇な運命のめぐりあわせによって私はこの位置に定着している。この微妙な薄氷の関係がどこまでつづくのかは分からない。あっという間に消えてしまいそうだから、そんな関係に私はしがみついていたいという醜悪な考えしかできない。みにくい心だと思うけれどそれも彼は知らないし知らない方がきっといいと思う。世の中には知らない方がいい事なんてたくさんあるから、この気持ちもその一つなのだろう。 「ジャスティンさん、これからどこに向かうんですか」 「近くで悪い魂があったのでそれを」 討伐しに行きますよ。 そう言った彼の言葉。私がそんな言葉にですらどきりとするのは強さと底知れないなにかを感じているのかそれとも彼に惚れているからなのか。武器である彼に職人がいないのと同じように私にも職人はいない。仲間と言えば安い言葉かもしれないがそれ以上を彼に求めてはいけないという事は分かっていた。彼にそんな感情が無いことはわかっている。それは彼の言動からも重々理解できたことだったから。だから、 覚めてしまうのを待つしかない。 この彼への想いが覚めていくのを私はただ待つことしかできなくて、この悶々とした気持ちも胸の高鳴りすらも虚構だと言い聞かせてただ暗示をかけている。この想いなどは所詮いつわりの物であるはずなのに、どうしてこんなにもむねがあついのだろう。こんなにも愛だと想っているのにどうして届くことがないのだろう。ああだめだ、こうやってどんどん落ちていくんだ。 それでも、 さめない恋なんてない、だから今だけこんなにもくるしくてつらい。 それは代価なのだろうか、かなわぬ恋をしてしまった私に対しての戒めか。 こいはなぜさめるの
お題 :: しゅろ 様 (20110326) 悶々。 |