私は彼の横顔を見つめる。まるで女の人のような色の白い肌、瞼を開ければ引き込まれるような深い青色の瞳、短めのブロンドの髪、意外と屈強なそのしなやかな筋肉。全てがいとおしく感じるものだから、私は彼を拒むことができないでいる。それは私が弱い人間だからかもしれないしそうでないからかもしれない他者に依存してしか生きられない人間だからこそ彼に依存してしまうのかもしれない。恋と言う感情は分からないけれど私のようなものではないという事は薄々気づいていた、私のはただの信仰なのだと。



 尊敬はしている。でもそれが愛と名のつくものなのかといえばそうなのかもしれないけれど恋のような甘美なものではなく、牢獄の鎖のようにしばりつけて離してはくれない何か。私にとってなくてはならないものに近い何か。水のような存在に近いのかもしれない、いわばライフラインといったような所だろうか。それでも進んで体を重ねたいとかそういうものではない事やそういう想いではない事は重々理解しているつもりだった。それでも彼の傍にいたのは私のエゴだ。私が我儘で聞き分けのない子供のように誰の所へも行ってほしくない独占欲でうめつくされている汚い心をもっているから、それを悟られないように傍にいた。それでも彼は気づいて一緒にいるかもしれないと思うと少し怖くなる。汚い心を隠してきれいなふりをしている私のことに。 とっくに気づかれているかもしれない、恐怖。



 そんな彼を私は掴みきれないでいたし恐らく彼は掴ませようとすらさせてくれないのだろうと思うと少し寂しくなる。それはお門違いなんだと言われればそうかもしれない。けれども私は器用ではないから本当の所何を考えているのかは多分わからないままなのだろう、それでもいいと感じるのはおそらく彼だからというのが一番の理由なのかもしれない。









 私は横に寝ている彼の髪を右手で梳く。綺麗な髪だった。私が好きな色の髪。しばらく私が髪を梳いていれば、「どうかしましたか」と小さく声がする。私は「ジャスティンの髪がきれいだったから」と答える。「そうですか」と目を開けた彼はとても優しげな瞳をしていて私はこの瞳に洗脳されているのかもしれないと考える。それならそれで本望かもしれない。



 「きれいな髪をしているのは、貴方もでしょう
 「私はあなたの髪の色が好き」
 「貴方の髪の色は、死神様と同じ色をしている」
 羨ましいですよ、と彼は私の髪を指に絡めた。



 「初めて、そういう事言われるの」
 「初めて言いましたから」
 「そっか」



 私がくすりと笑うと、彼はつられたように優しげな笑みを浮かべる。願わくばこの関係がいつまでも続けばいいと心のどこかで思っている私はとても汚い心でほほ笑むのだ。彼の優しそうな笑顔の掴みどころのなさは健在だから急に真顔に戻った時の不安な気持ちが錯覚であればいいのにと何度思ったことだろうか。掴みきれない男である彼に翻弄される私はなんとも愚かしい人間で、私はそれでもいいと望んでしまったのだから脆い人間の一人に過ぎない。私が彼にとっては誰でもいい一人なのかもしれないと思うと背筋がぞっとする。



 「貴方はとても美しい」









 そう言った貴方がいつ離れていってしまうのか分からない恐ろしさはどこから不安に変わって私を蝕んでいくのだろか。











焉の産声






お題 ::しゅろ 様





(20110326)こんなジャスティンはジャスティンじゃないかもしれない^^^^ 似ていないのはいつものことだけれども。