(清楚な包みの中身は)




 立派な風呂敷包みを背負って歩いていれば、それは相手方にとって格好の獲物に見えるらしく、どうやら私は獲物として彼らに認識されてしまったようだった。私は思わず身を竦めて、どうしようかと立ち止まる。考えても考えても全然良い案は思いつかないし、奇襲と言っても、一般人で何の武術の心得も持たない私には出来る事が限られている事は知っていた。


 ああ、もう少しで里に着くのに。


 行商人として旅をした先の里の、その近所の砂の里からの注文の品を届けようと少し遠出した矢先の出来事だった。


 どうしよう、あと少し。
 あと少しなのに。


 里まではあと1キロも満たない距離だろう。なんとなく、うっすらと国境付近の門も見えているのにこんな所で襲われる間抜けはそうそういないだろう。私はため息をつこうとして、相手を挑発するかもしれないと思いとどまり喉まで出掛かっていたそれを寸前で止めた。相手は私に睨みを効かせていて、先ほどからずっと「なあ、お嬢ちゃん。その荷物で見逃してやるからよ」なんて私に脅しをかけている。無視するのにも限界がそろそろ来ていた。


 ここから叫んでも、あそこまで叫び声が届くだろうかわからない。
 私は身を縮めて、相手の怒号に耐えていた。


 「なぁ、お嬢ちゃん。何か言えよオラァ!」
 「金目のモン置いてどっか行けっつってんだろ!?」


 胸倉を掴まれて、私は地面につかなくなって宙をさまよっている足を相手のみぞおちをめがけて振り上げた。と、見事奇襲が成功し、「ぐはあああああ」と大声を上げて、ごろごろと砂の地面を転がる野党A。「テメェ、よくも!」なんて大声を上げた野党Bの顔面に、正義の鉄拳とおぼしき攻撃が命中した。「ぐはぁ!」と言って瞬時に気を失う野党B。
 何事だろうと、攻撃の飛んできた先を振り返るとすぐ目の前に黒い服の女の人と男の人がいるのが見える。


 「野党どもに気づかず申し訳ありませんでした。様、お怪我はありませんか」
 「ええ、お心遣いありがとうございます。私も、お届けの品も無事でございます」
 私の言葉を聴いたテマリさんは、それを聞くと安心したように微笑んだ。私も営業用の微笑を浮かべる。


 「ご案内いたします、どうぞこちらへ」
 カンクロウさんは敬語になれないらしく少しぎこちない言葉で私を案内した。
 私は言葉に従って、彼らの後に続く。何度か私たちの行商が来ている砂の里には、よく贔屓にしてもらっているので両親からは「失礼の無い様に」といつも言い聞かせられている。彼らも言われている事は同じなのだろう。なんだかそれがおかしくてくすくすと笑いそうになってしまった私は、だめだだめだと思って笑いをこらえた。


 私がこの里へのお使いに進んで来ているのがカンクロウさんに会うためなんて誰かが聞いたら驚くだろうか。私は彼の後ろを歩きながら思わず緩んでしまう口元に気づいて自嘲した。


 気づかれない想いなら、胸に秘めておくのが常だから。





















お題::farfalla





 拍手第二弾、カンクロウ。え、あまり絡んでない? …そんな馬鹿な!!
2009.08.20 サイカ