恐ろしい人間の性に触れる瞬間、ぞわりと身の毛がよだつ。背筋の凍るような悪寒に、わたしはぶるりと身を震わせた。
 恐ろしかった。そして、怖かった。


 拘束されていることも、そして彼がわたしのことを実験動物としてしか見ていないことも。おぞましかった。ねえ、どうしたらこっちをみてくれるの。ちゃんとあなたのことおしえて、ちゃんとわたしをみて。そんな私の考えは、あなたにはずっと届かないのだろうか。ずっと、ずっと、このまま。わからないまま、あなたは壊していく。死なないカラダになってしまった私を、ずっとずっと研究するあなたは、わたしの心の痛みを知らない。心の壊れかけたまま生き続ける人形のようなわたしを、あなたはずっとずっと壊し続ける。


 「さて、仏頂面屋。今日はどこをバラしてほしい?」
 「あなたに壊された心を」


 いっそのこと、跡形もなく、ばらばらにしてくれたら。ぐちゃぐちゃになるまでかきまぜて、もう何もわからなくなるまで。



(20130122|×|空で溺れる魚の幸福)