瞬きする瞬間すら惜しいと感じるようになっていた私は獅郎の家に住みこむようになってしばらくが経っていた。何気ない日常が色彩を放ち、華やかなものに変わる。愛される日々というのは私たちにとって幸せな時であり喪失したものを埋めるための行為でもあった。寿命がきわめて長いエルフ種は人間に恋をしても恋人として共に生きる時間は少なく、いつも残される側。それが辛くて自殺や心中で命を落とすものも少なくはなかった。愛に生きる種族とまではいかなくとも、感受性の強く警戒心の強い誇り高き種である私たちが心を開いた人が寿命ですぐに傍を離れ他界してしまう事は何よりも辛く悲しい。人はなぜ短く儚い人生を生きていて私たちと一生を添い遂げてはくれないのかというのが私の幼いころの疑問だったがいつしかその疑問も月日を重ねるごとに薄れていく。



 獅郎はいつも通り私の頭を撫でて、私をまるで猫のように扱う。獅郎の頭は白髪が増え、今では白髪の方が多いくらいになってきた。獅郎にとっては長い年月かもしれないけれども私は彼と出会ったころから全く変わっていない。気味の悪いほどに年を取らないのは、一定年齢で成長が止まってしまうからである。年齢が止まる時期はそれぞれ異なる。私のように十代後半で止まる者もいるが大抵の場合30代前半までの比較的若い時期で止まる。その人が一番輝いている時期で止まるとされる年齢は、母親からの遺伝もその交わった種となる父親の影響も強い。



 しかし、いくらあがいてもそれがエルフ種に生まれた私たちの定めだった。



 ソファに座った彼にごろごろと猫のように甘えれば、彼は私の頭を撫でる。テレビを見ながら一緒にいるだけの時間が何よりも幸せで満たされていた。ごつごつとした手も少し冷えた体温も心地よくてくすぐったい。髪を梳く手はゆるやかに私の腰のあたりまで来て抱き寄せられる。彼の大きな胸に飛び込むようなかたちで背中に手を回した。きゅうっと胸が締め付けられるような感覚。鼓動が早くなるのは私が彼を意識しているからなのか、きっとそうなのだろう。






 「かわいいお姫さまにおじさん我慢の限界なんだけど」
 「…獅郎?」



 私が獅郎を見上げれば彼は私にくちづけをおとす。私は彼の端正な顔に見惚れてしまう、やっぱり素敵だ。そういえば友人が主人がひどすぎて契約を切ったと言っていた。おそらく私はここ数十年は彼のそばに置いてもらうつもりでいる。めずらしいこともあるのね、とその友人に野次をとばされもしたけれども恐らく今の私が何を言っても惚気にしかならないのだろうと思う。



 「愛してるぜ、
 「私も愛してる、…獅郎」






 そして私たちは先程より深く口づけをかわす。






















「一級危険亜種に指定されるエルフ種は一般的に主人に仕える換わりにその寿命を食い物にすると言われていますが、あなたの生涯の愛を換わりに捧げることでその寿命は本来生きる運命通りのまま契約することができます。あなたの寿命を盗ろうとは思いません、だからどうか私を傍に置いていてくれませんか」












(20110528:titleソザイそざい素材 ) …需要のあるかどうかわからない獅郎夢とかなにこれあれおっさんにもえるとかこんなつもりじゃ父親世代とかかっこいい私得すぎるwwこの語の展開的に主人公がもうアレな感じで私得すぎるwww