「オレは恐かったんだ、がいなくなっちまったのが」
 「私が?」
 私が抱きつかれたまま首を傾げれば、彼は「あー」と言いながら私の背に回していた腕を緩めて離し、彼のひざの上に戻しました。視線はまだ、私のほうに向いていました。真剣な瞳に射すくめられて、私は目を逸らす事なんてできませんでした。


 「会った瞬間から、お前の事可愛い奴だなって思ってて。最初、オレのコロロが見えるあたりでシャーマンだろ。その上、とっさの判断で除霊もして、まだ会ったばっかの見ず知らずのオレのピンチも助けてくれてよ。オレ、あれからずっとのことが気になってて、が家に来る事になった時にはすっげー嬉しかった」
 ホロホロ君は続けます。
 「昨日、お前が言ってた事なんてずっと冗談だと思ってたんだ。は、来た時からオレの家にずっといるもんだと思っちまってた。だから今日の朝、急にいなくなったときにマジでヤベェと思って、久しぶりに焦ったぜ」


 私はホロホロ君の言葉に改めてときめきました。


 「見合いなんてもんはオレにとっちゃまだ先の事だけどよ、どうしてもオレは居ても立ってもいられなくなっちまった」





 彼はどれほどの覚悟を決めて私を助けに来てくれたのでしょうか。きっと私には量りきれるものではないでしょう、そんな事をするのもきっと失礼に値するくらいに、彼は私の事を真剣に考えてくれているようでした。私は初めて恋に落ちた人が、彼で本当に良かったと思いました。
 きっと私の事をこんなに思ってくれる人なんて他にはいません、後にも先にも、現れるとは思いません。


 「お前が誰かにとられていくのを、黙って見てられるほどオレは大人じゃねぇんだ」
 「ホロホロ君」
 「だからよ、もうどこにも行かねぇって約束してくれ」


 ホロホロ君がぎゅうっと握ってくれる手で、私はぎゅうっと彼の手を握り返しました。






 「私、思ったんです」私はようやく意を決して口を開きました。「見合いの準備をしている時も、ホロホロ君の家から連れて行かれるときも、見合いの最中だってずっとずっとホロホロ君の事が頭から離れませんでした。だから気のない見合いなんて全部断ってしまえばいいと思ったんです」
 「!」
 ホロホロ君は驚いて目を丸くしました。


 「私は悪い親不孝者です。それでも構いませんでした。何を言われてもいいとさえ思った。これからどうなっても構わないと思った。両親がなんと言おうと私は私に変わりありませんし、私の気持ちには嘘はつけません。だから、私は初めて自分の気持ちに正直に行動しました。私は貴方なしでは生きてはいけないと思ってしまったから」
 私は続けます。「だから、私があなたの傍を離れるなんて事はきっともうないでしょう」


 「私が愛してるのは、きっとこれからもあなた一人です」
 「……サンキュ、
 照れくさそうにホロホロ君はニッと控えめに笑いました。








 私たちは依存してしまった。
 だからこそ強く、だからこそ弱い。














(失くす恐怖)






























恐怖を知れば知るほど人は臆病になってゆく生き物だから。(20100113)