満月がとても綺麗でした。
 クレーターの模様がまるでうさぎのように見えることから月にはうさぎが住むと聞いた事がありますが、月というものはいかんせん不思議なものでなにやら人を虜にしてしまうような妖艶なる魅力も持ち合わせているように思いました。私はその妖艶な満月をうっとりと眺めました。なんて綺麗なまんまるの月なのでしょう。


 夕食をごちそうになった私は、襖を開けた部屋から月を眺めていました。よく月が見えて、心地のよい風がひゅうひゅうと入ってきます。気持ちがいいなあなんて呑気に思って空を見上げていると、ホロホロ君がひょこりと襖の陰から顔を出しました。


 「ホロホロ君?」
 私が声をかければ彼は一瞬びくりとして、少し躊躇しながら部屋に入ってきました。
 「何してんだ?」
 「月をみていたのです」
 あまりにも綺麗で芳しい満月だったものだから見入ってしまったのと言えば、へぇーと彼は私の隣に腰を下ろして月を覗き込むようにして見た。濃紺の絨毯に飾られた金色の刺繍のようにちりばめられている星と、その中央にどんと構えている月。


 「綺麗だな」
 「ええ、とっても」
 私は彼のほうにちらりと視線を向けて微笑を返し、すうっ、と月へ視線を戻しました。


 「今日は満月なんだな」
 「まるで吸い込まれそうなくらい」
 「何ホロ?」
 「あ、なんとお伝えしたらいいのでしょう…すうっと、あの光が降りてきそうな感覚なんです」
 「分かんねェ、けど、何となく分かる気がするぜ」
 「月というものは不思議なものなのですよ」


 見ていて全く飽きが来ないものの一つですと言いながら私が目を細めれば、月は微笑んだようにすうっと光りを増したように見えました。なんとも、芳しい。艶やかな、満月。一瞬でも気を抜けば魂さえも奪われてしまいそうな、月の魔力。さながら、魔性の月とでも称したほうがよろしいのでしょうか、恍惚とした月をみていると何故だか心がとても穏やかになり落ち着くのでした。


 「なあ、
 「何でしょう」
 「お前、本当に行かなくてもいいのか」


 さらりと私は髪を耳にかけると、言います。


 「見合いのことですか?」
 すると彼はだんまりと黙ります。おそらくピリカちゃんからおおむね私が行きたくないといった理由も、我が家の家計についても聞いているのでしょう。そのだんまりはきっと肯定だと、私は受け取りました。しかし一度決めてしまったからには、妙な意地が残り出てきた家になど戻ろうという気が起きようとも後戻りはできません。そしてまた私は今、家に戻るつもりもさらさらありませんでした。


 「私は両親の言いなりになるだけの私ではありません。見合い婚など、私の性にもあいません。しろといわれた所で、嫌なものは嫌です。ギリギリまで絶対に見合いなどはしません」
 「それでも大事なんだろ」
 「いざとなった時に考えます」


 ホロホロ君の心配する事ではありません、とにこやかに答えると彼はそうかと一言言って月へと視線を戻しました。












(月の満ち欠け)
































前回絡みが無かった件について申し訳ない気持ちでいっぱいになったので今回はいっぱい話したよ!(20100107)