謀反という行為が有益と思わずとも
   謀反をしなければならぬ時もある
   それは突拍子もなく
   ときに予告状もなく
   唐突に訪れることを
   覚悟しなければならない


  五.反逆不在証明



  シカマルとチョウジは甘味処の列に並んでいた。並んでいるのは老若男女問わず常に5〜6人。ちなみに彼らの前に3人。
  ヒナタと姫は二人であっちの雑貨屋に行ったままなので、おそらくしばらくは雑貨を見ているはずである。
  ぼーっと雲を眺めながら任務中なんだよなあと思いつつ、甘味処に並んでいる自分に意識足りてねえなあと思う。
  さて、シカマルがチョウジと共に姫と別れたのにはきちんと理由があり(…何の意味もなく分かれて行動はしない)、
  ヒナタと姫が二人行動に移ることで彼女らの信頼関係を築くのが目的だ。
  成功すれば、彼女らは仲良く戻ってくるはずだろう。こういう事は男が行くよりも女同士のほうが話も合うと聞く。
  というのも、信頼を得ないことには任務に支障をきたすことになるからで、それ以外の何物でもない。
  シカマルはぐるりとさりげなく周りを見わたすが、怪しい気配や殺気は感じられず、これといって怪しい人物も見当たらず、
  特に収穫といった収穫はないように見えた。これはまあいい兆候だが、油断は禁物だ。
  知らせのないのはいい知らせだが、逆もまた然りである。どちらにしろ、油断は禁物だった。

  注文する順番が回ってくる。
  シカマル達は元からここで食べるつもりはなく、持ち帰って彼女らと一緒に食べるつもりだった。
  チョウジ曰く、この店ではみたらし団子が一番有名とのことだったので、みたらしを13本注文する。
  もちろん10本はチョウジの分で残りの3つを三人で分けるという魂胆だ。
  商品をもらい料金を払うと若い男のバイトから「まいどー」という明朗な声とにこやかな挨拶が返ってくる。
  どうやら女性客の中には、このまだ若い男のバイト目当ての客もいそうである。
  いや、実際に何人かはいるらしく、若い男のバイトが「まいどー」という度に、きゃあきゃあと黄色い声が聞こえた。


  店を後にしたシカマルとチョウジが彼女らと合流しようとして雑貨屋に向かう途中、強い殺気がこちらに向いているのに気づく。
  シカマルがチョウジに目線を合わせ、互いが殺気があることを確認しあうとその場から瞬時に左右の屋根の上に移動する。
  一般人に迷惑がかかるのはよくない。その配慮もあるが、人ごみを見渡せるというのも屋根に移動した理由のひとつだ。
  下を一通り確認し終わり、人ごみに殺気はないというのが分かった瞬間にその殺気は彼らのすぐ背後へと迫っていた。

  『今度はお前らかァ…弱そうだな』

  クナイを取り出し、後ろを振り返るがそこにはもうすでに影はない。
  「チョウジ!」
  慌ててシカマルが彼を振り返るが、チョウジのもとにもう既に殺気を出していた人物はいなかった。
  「…急ぐぞ!」
  「うん!」
  シカマルとチョウジは、二人のもとへと急ぐ。





  「あ、シカマル君、チョウジ君! …ど、どうしたの二人ともそんなに急いで!?」
  「…移動する。…話はそれからだ」
  先ほど移動していた時までの眼つきと一変して、さらに鋭くなっている眼つきをしているシカマルに、
  ヒナタはただならぬ何かを感じたらしく、力強く頷いた。姫は目を見開いて顔を伏せる。
  彼らは人通りを避けながら人通りの少ないほうへと進んでいく。
  「これからは人通りの多いところは避ける」
  「森を通るってこと?」シカマルの言葉に、チョウジが横槍を入れる。
  「まー、そういうことだ。で、姫さんは誰かが背負って移動する。そのほうが目的地まで早く着くからな」
  姫は頷く。先ほどから浮かない顔をしているのは、背負われることに対してではないようだ。
  「というわけで、これからは一列で移動。オレは一番前を行って前方からの敵に備える。
   その次がチョウジ。体力があるお前は姫を背負って左右からの攻撃の警戒をしてくれ」
  「わかった」と、チョウジ。
  「それから最後だが、ヒナタが白眼で後方からの攻撃の警戒と、前方から攻撃が来た場合の援護を頼む」
  「うん」と、ヒナタ。

  「やべー事になったって事は変えようがねーみたいだから理由は移動しながら話すぜ」

  「姫さま、」チョウジが姫に背中を向ける。「ほら、乗って」
  「…わかった」
  ひょいと、姫がチョウジの背中に体重を預ける。チョウジが立ち上がると同時に四人はその場を後にした。
  風を切るように三人が走るのを姫はチョウジの背にしがみつきながら、体感していた。
  前方でシカマルが状況を説明している。チョウジ・ヒナタにもその声は通じているのだろう。
  姫は一人浮かない表情のままだった。チョウジが心配そうに声をかけても、大丈夫と返すだけ。
  シカマルが先程の強い殺気について簡単に話したところで、話題はつきて辺りは木々のざわめきしか聞こえなくなった。

  四人はしばらくの間、無言で目的地に向かって急いでいたのだが、その沈黙を破るひとつの声が響く。

  「そなた等に、少し謝っておかねばならぬことがある」
  「何だよ、急に改まっちまって…」
  当たり前のような急な発言にシカマルが疑問を投げかけると、姫はチョウジの背で申し訳なさそうに顔を伏せた。
  「…妾の護衛はとても危険なのじゃ」ぽつりぽつりと、姫は重い口を開く。
  「じゃから、護衛の任務を諦めて帰って欲しかった。最初の物言いは、そう言えばそなた等が妾などの護衛をする
   気力をなくして里に大人しく帰るだろうと思ってのものじゃ。今更だが無礼講、申し訳なかった」
  急に手のひらを返したように大人しくなってしまった彼女に、一同は言葉が出ない。

  「…どうして、危険だと言い切れるんですか?」少しの間を置いて、姫の後ろを行くヒナタがおそるおそる問いかける。
  姫は一瞬、気まずそうな表情になって、「そうじゃな、」と口ごもる。
  5秒にも満たない沈黙が過ぎて、姫はようやく重たい言葉を吐き出した。

  「…人が死んでいるからじゃよ」
  一同、息を呑んで立ち止まる。それに構わず、姫は続けた。「それも、狙われているのは妾ではない。そなた等のほうじゃ」
  「何で、ボクたちが狙われるの?」チョウジの問いに、姫は間を置かずにスラスラと答える。
  「強いて言うならば、『奴らの趣味』といったところじゃのう」
  「『奴ら』?」シカマルが問う。「ってことはオレとチョウジが遭遇した奴の仲間が何人もいるって事かよ」
  姫は無言で頷く。
  「『奴ら』というのは二人組で、どちらも残忍な性格をしておる。片方が体術、もう片方が幻術に特化しているのじゃ。
   妾の様な、弱い輩には興味はないというところを見ると、ただの戦闘馬鹿か何かじゃろう。しかし、腕だけは確か。
   油断していた訳ではない前任の護衛達である霧隠れの里の上忍が、四人束になってさえ全員瞬殺じゃった」
  「「「……」」」
  姫は嘘を言っているようには聞こえず、真実だとしてもにわかには信じられない話をしていた。
  護衛任務で来た小隊の三人が言葉に詰まってしまうのも、無理はないだろう。
  前任の上忍四人から成るフォーマンセルが瞬殺。それもたった二人に。
  「今からでも遅くない、引き返すなら引き返すがよい」
  姫は、真剣な眼差しで三人を順に見た。「もう、妾は無駄な死を目の当たりにしたくはないのじゃ」
  はっと息を呑んで少しひるんだ三人だったが、互いに顔を見合わせて意思を確認すると、どうやら思う事は同じだった。
  互いに目配せしてにやりと笑うと、姫は呆気にとられたような表情になる。

  「一度、守ると約束しちまったもんは、守らなきゃならねーからな。めんどくせーけど」
  「そうそう、ボクもあの家臣の人に約束しちゃったし」
  「私たち、あなたを無事にお城まで護衛するのが任務ですから」

  ――全く、なんてお人よしなのじゃ。こやつらは…
  驚きで目を見開いた姫は、どうやら涙腺が緩んでしまったらしく、目からはきらきらと光る涙が溢れ出した。
  「本当に、」姫は口元を手で押さえる。「ありがとう…」


  「まあそれが任務だからな……って、お、おい泣くなよ!」
  「ちょっと目にごみが入っただけじゃ」
  「ゴミどころの話じゃねーだろ、ったく」呆れたようにシカマルが言う。
  「じゃあ、姫さまはさっき買ってきたお団子食べるといいよ! きっと元気出ると思う」
  「ありがとう、後で頂く」




  目的地まで、後半分。

  不審な影が、約二つ。















【あとがき】
     あー、書きたかったこと一つ目消化です。姫の告白大会!「実は好きでした!」、みたいな!(ちょっとニュアンスが違う)
     こういうぐろぐろどろどろに持っていくのが大好きです趣味悪いとか昼ドラとか言わないであげてね……言われるけど!
     昼ドラもグログロも苦手だけど書くのが好きです。こう心理描写とかが本当は面白いんだけど、心理描写が苦手とか末期…チーン。
     もっと文才がほしいです。なんか降って来ませんかね、ぽーんと!
     2009.02.25