心してお聞きなさい
   有益で実益を兼ね備えた
   利益の出るよい話です
   但し、あなたの命の保障まで
   致しませんのであしからず


  三.独占至上命令




  「すいませーん、姫の護衛に来た者ですがー」

  巨大な門の前に三人の忍が佇んでいた。
  そう、シカマル、チョウジ、ヒナタの三人組である。
  彼ら三人は『姫の護衛』という、おおよそC級任務程度と思われる仕事のためにここまで足を運んだのだが
  シカマルの三度目のやる気のない呼びかけにも関わらず、一向に人が来る気配が……ない。

  「それにしても、大きい門だなァ〜」
  「…そうだね」

  上から、チョウジ、ヒナタの順でのんびりと門に対する感想を述べる。
  門の全体像は、木造の木目調を生かしたような神社の大鳥居のような佇まい。
  その鳥居のような門の内側に、漆塗りの真っ黒なこれまた木製か石製であろう扉がついている。
  淵や凸面には金箔が貼られ豪華な作りとなっており、上のほうには、どうやら竜の彫り物がしてあるらしい。
  迫力ある双竜らしきものが、向かい合って火を吹きあっているような図柄である。
  さらに、その門に準じて塀も長く、そして高い。

  「つーかよー、お前ら暢気すぎだろ。あーあ、めんどくせー」

  城主のヤローも呼んだら早く出て来いよ、と少し内心で悪態をつきながら、シカマル一行は誰かが現れるのを待つ。
  …それにしても、よく見れば見るほどデカイ門である。
  しかも、ずいぶん遠くからでも城の屋根が見えた所から推測すると、どうやら城の大きさもべらぼうに大きいらしい。

  「ねえ、シカマルー。お城の人全然来ないよォ〜?」
  「言われなくても見りゃわかるだろ、バカ。全く、めんどくせー」

  パリパリとカルBポテートを暢気に頬張るチョウジに不機嫌な様子のシカマル、そしてその後ろに控えめに佇むヒナタ。
  どうやら、ヒナタは二人の雰囲気に気おされていつも通り、自分の意見が言えない様子である。
  まあ、この場合においては急なことではないので、別にいいと思われるが…。

  そして、流れる沈黙。

  シカマルが痺れを切らして4回目になる「すいませーん」を言いかけた時、
  カチャリと音がしてギーっという古臭い音を立てながら僅かに門が開いた。
  門の内側を見ると、どうやら家臣の者らしき人物がこちらを伺っている。

  「木ノ葉の忍の方ですか?」
  「そーだ」と、シカマル。
  「お入りください、とても慌しくて申し訳ありませんが…」
  申し訳なさそうにシュン、としながら、家臣はのっそりと扉の内側に入って見えなくなった。
  すると、扉が大きく内側に開いた。人が十分に、――勿論チョウジでも――通れそうな隙間が開く。
  そこをシカマル、チョウジ、ヒナタの順で潜り抜けてに城内へと入ると、家臣によって扉は閉じられた。
  家臣は、はにかんだような笑みを浮かべると「城主様と姫様の元に案内いたします」と言って先頭に立ち案内を始めた。

  ずんずんと、「無駄に広いんですよこのお屋敷―、すいませんねえ」などと無駄口を叩きながら先に進む若い家臣。
  彼はまだ二十代前半のような若々しい容姿をしており、地毛なのか脱色したのかよくわからないこげ茶色の短い髪の毛は、
  癖っ毛なのだろうか、数ある毛先があらぬ方向へと向いていた。
  先ほど、この家臣が慌しいと形容していた城内は、その言葉通り、ドタンバタンと物音がせわしなく響いている。
  何事が起こっているのかわからないのだが、どうやら皆何かに必死で凄い形相をしていた。
  この状態では、話しかけてもまともに受け答えしてはもらえなさそうである。

  「ここです」
  ほぼ会話なく進んできた城内の奥の奥。
  「様、姫様、護衛の者を連れて参りました」
  「通せ」
  低い、テノールの声が短く響く。これが、家城主であるの声だろう。
  急に厳かな空気が漂う中、襖ががらりと開いた。

  「お初にお目にかかります、この度護衛につくことになりまし」
  『た、奈良シカマルでございます』、までその言葉が続くことはなく、途中で姫の言葉がそれを遮る様に割って入った。
  「自己紹介など後でよい、立つ準備はできておるのじゃろうな」

  キッとした持ち前の鋭い目でシカマル一行を睨み付ける姫。「はい」と短くシカマルが答えると「出立じゃ」との声がかかった。
  いくらなんでも早すぎだろ、こりゃないぜ。と思うのもつかの間。
  絵羽模様の豪華な衣を脱ぎ捨てた姫は、いかにも最近の町娘といった装いとなり
  最低限の荷物を持って行く準備万端という状態で立ちすくんでいた。
  ――あーあ、やる気満々だよ、この女、とシカマルが内心で呟いたと同時に、彼女は彼ら三人に冷たく言い放つ。

  「妾は、別にそなたらの事など当てにはしておらぬ」
  来て早々、いきなりの不必要宣言。
  「妾一人でも行けるというたのに、あの能無しどもがそなたらを呼んでしもうたのじゃ」
  『能無し』とは、家臣のことだろうか。呆気にとられる三人をよそに姫はスタスタと三人の前に立つ。
  「そこまでにしろ、。彼らは何も悪いことはしておらぬぞ」
  に対して睨みを利かせると、彼女は心外だとでも言うように捨て台詞を吐き捨てていく。

  「…そういうことじゃ、肝に銘じておけ。そなたらは不必要だとな」
  ドンドンバタンと襖が勢いよく閉まる。
  まるで暴君か何かのようだとしまった襖をしばらく見つめる三人だったが、低いテノールの声に現実に引き戻された。

  「あー、なんだ。取り合えず気分を害されたと思うので謝っておく。すまないな、素直じゃない年頃なんだろうがねえ」
  急にあたりに和やかな雰囲気が漂いだす。
  状況が把握できず、シカマルは「あの、聞いておきますけど、本当に護衛必要なんですか」と問いかけた。
  その質問に、きょとんとした城主だったが一瞬おいてハハハと豪快に笑い始める。
  「まあ、そうだな。あんな『じゃじゃ馬』でも一応箱入り娘だしな、万が一のことがあっては大変なので必要だ」
  そこでいったん言葉を区切り、また話を続けようと口を開く。
  「で、話は変わるが、あの『じゃじゃ馬』普通に手なづけるのなんぞ大変だろう。
   だからそうだな、奴と…同等の口の利き方をして構わんことにする。
   隣国までは長旅だから、ま、がんばるのだぞ! ハッハッハ!」
  周りから「殿! 何をおっしゃられるのですか!」などと非難の声が飛ぶ。
  それと同じくして「妥当なお考えだろう!!」と賛同の声も飛んだ。
  シカマルはまたも呆気にとられる。この城に来て何度か呆気にとられてきたがもうすでに予想外の事態である。
  いくらIQが高いとはいえ、この城に住む連中の事までは予想できはしないのだ。
  ――つーかノリが軽すぎるだろ、オイ。大丈夫かよ。
  そして、そう簡単に姫様とタメ口を聞けと言われても、気後れしてしまうのが人間の悲しき性。
  いくら城主の命でも、不安になるものである。そう、大抵の場合は。
  ――ま、いーか。めんどくせーことがひとつ減ったし。
  そう、大抵ではないのがこのシカマルという男。
  そして食べ物以外のことは何も考えていないだろうチョウジ。
  それから何を考えているのか全くつかめないヒナタ。



  行く先、見えず。
  なにか一波乱ありそうな、予感がふらり。















【あとがき】―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  はい、ようやく3話目で対面&名前だすって遅えええ! そして書くペースが亀以上に遅えええ!!
  そして前回でキャラ視点的なものは無理だと精神が訴えたので早々に断念して第三者視点で進めます。(←
  それからチョウジの口調を書こうとしてたら、だんだん名古屋の女子高生になりました(某国の人を連想させる…)
  で、話は変わるんですが今後戦闘シーン(書きたいだけ)とか流血(書きたいだけ)とかオリキャラとか出ます。
  で、今更ぶっちゃけますが、これ流血・戦闘シーンとか書きたいがために書き始めたものですすいません。
  いちゃいちゃしたバイオレンス的なものを期待させてたら申し訳ない。(あれ、ちょっと過激すぎるような…)
  多分上はみじん切りにした、みじんぐらいしか…いや、むしろみじんの中のみじん、キングオブみじんみたいなものです。
  え、でも…それもあるかどうか…まー十五禁ぐらいですかね、血グロ表現のせいで!!!(とんだ詐欺)
  しかし戦闘がまだ先になりそうでうずうずしてます。早く進めたい早く進めたい…ひいい、もう戦闘書きたい。(駄目な兆候

   【分からない☆和風用語解説!!】…普通の人が知っているかどうか分からない用語解説コーナー(出オチ)
   ★絵羽模様…和服で身ごろ、そで、おくみなどに連続する大柄で華やかな模様。布をいったん着物の形に仕立てて下絵をつけからほどいて染める。
  (出典::三省堂国語辞典・第四版より抜粋)
  2009.01.05 灑渦