(※別館リクエスト|ヒロイン名固定) ※頭脳だけがとりえ肉弾戦は中堅くらいの軍人//※大佐=マギウス


 「ツェットズィーベン
 自分に預けられた僅かな彼女の重さが心地よかった。彼女は私がマギウスになる前からの部下であり、私が丹精込めて作った作品の一人である。彼女に異常な執着のあるのは、恐らく彼女の出来が他よりもいいからなのかそれとも彼女の言う、人間の「愛している」という感情に興味があるからなのか。呼べばすぐに駆けつけてくる彼女は、まるで忠犬のように見えた。いや、実際そうなのであろう。頭を撫でてやれば彼女は嬉しそうに目を細めた。

 「はい、なんでしょう」
 「君は私のことを愛していると言ったな」
 そう言えば、彼女は「そうですが、」と小さく声をあげた。
 「やはり身の程をわきまえたほうがよろしいでしょうか。大佐とこうして会っていることがばれてしまえば、私も大佐もよくはない噂が広まってしまいますし…」
 わたしと大佐では階級も違いますし…と彼女の言葉は語尾にいくにつれ音量がしぼんでいき、そしてうつむいた彼女は不安そうに瞳を揺らした。その一挙一動に私が揺らぎそうになる。人間にマギウスである私が心を動かされることが果たしてあるのだろうか、と疑問に思う。しかし現に彼女には揺らぎそうになっている自分がいるのである。これも実験なのだ、私の中で彼女に本当に愛が芽生えるのか。私は彼女の言葉を否定するために首を横に振る。顔にかかる髪をす、と手でよけながら顎をつかみこちらを向かせた。

 「いいか、よく聞けツェットズィーベン。そうではない」と、私は答える。「次の休暇の件についてだが」
 「はい、なんでしょう」彼女は表情を表に出さないように私をじっと見た。すこし動揺が見て取れるが先程よりはそれは薄い。「任務が入ったならそちらを優先させますが……」
 「いや、」私が首を振れば隣の彼女がこてん、と首を傾げた。「またこうしてここに来てくれないか。私はもう少し君のことを知りたい」
 「はい」

 「ツェットズィーベン、どういう事かわかっているな」
 「はい」と、彼女は答えた後に一瞬戸惑って「いいえ、」と訂正した。「推測の域ではあります」
 彼女は正直である。いい意味でも、悪い意味でも。まあ、それを教え込んだのは事実私であるからこそ、多少の責任は私にあると言えないこともない。私は笑みを浮かべるとそっと彼女の唇に軽く口付けを落とす。彼女は少し驚いたように目を瞬かせる。そのガラスのように美しい瞳に私は一瞬見惚れていた。

 「君の推測はおそらく正しい、さすが私の作品だ」
 それを聞いて「はい」と、ふわりと笑う彼女を私は抱きしめる。そう、彼女はまだ利用価値のある私の人形だ。