(特務大尉達とお茶会 ほのぼの E11裏切り前|別館リクエスト|ヒロイン名固定) 午後の昼下がり、私たちは久々の休息に羽を伸ばしていた。珍しくハーノもいるのは、おそらくデートの予定がないからだろうか。任務に一つ区切りがついたのが重なって、全員がこの場にそろうのは久しい。私はアードライがいれてくれた紅茶に手を伸ばし、口を付けた。ふわりと香る華やかな紅茶の香り。 「いい匂いね、バラの香りがするわ。とってもおいしい」 「先日街に出たとき、良い紅茶が手に入ったんだ」 少し嬉しそうに語るアードライはおそらく本日の主催だ。彼の持ち寄ってきた紅茶と、私とハーノの持ち寄ったお菓子でちょっとしたティパーティである。無機質かつ質素な机に、不釣合いなくらいかわいらしいランチョンマット。焼き菓子のバスケット。焼き菓子はわたしの行きつけの店から買いだめしていたものだが、横に置いてあるクッキーやらなんやらはハーノが女の子たちから受け取ってきたもろもろである。これだから顔のいい男は、とため息をつきたくなるがそれがハーノの強みであって一概に否定することはできない。 「確かにそこそこいい品のようだな」とエルエルフがカップに紅茶を淹れる。 「それにしても珍しいわね、みんな揃うなんて」 「ま、こういうのもいーんじゃねーの? たまにはさ任務なんて忘れてパーッとしようぜ」 ハーノがへらりと笑う。その言葉に、それもそうね、と頷くと私も紅茶を啜った。「確かにここ最近忙しかったし」 「そーそー、そのくせ全然強い奴いなかったんだよねぇ」そうぼやくのはクーフィアだ。「そーうだ! ツェットズィーベンが手合せしてよ、いーでしょ?」 「はいはい、また今度ね」 「もー、いつもそれじゃんかぁ」 「クーフィアの手合せはいつもガチな殺し合いじゃねーか」 「ハーノのケチ! そんなだからいっつも女の子に逃げられてるんでしょ? ねーえ、ツェットズィーベンそれとってよぉ」 「なんだとぉ、こいつ好き放題言ってくれやがって!」 「ハーノ、クーフィア相手に大人げないぞ」 「あーはいはい、イクスはほんっとお堅いんだからさ。ただの戯れだろ? ったく、お子ちゃまは女の子なんかにゃまだ全然興味ないもんなぁ」 クーフィアはつーん、とハーノの言葉を受け流しながらわたしの腕にすり寄ってくる。こうして大人しくしていればまるでかわいらしい弟のようなのに、クーフィアはいい意味でも悪い意味でも人の心を裏切る。 「それってどれかちゃんと言ってくれなきゃわからないわ、クーフィア」 「そのおいしそうなやつ」「ああ、これ」ひょい、とマフィンをとってやれば彼は年相応にわーいと喜ぶ。こういうとこ見てると、ホントただの子供なんだけど。 「そういえば今度の潜入、二人だったっけ」 「そ、僕とエルエルフ」 「へぇ。じゃ、わたしたちはお留守番か」 「どーぉ、暇なら俺とデート行く?」 「ハーノ。悪い冗談はよせ」 「悪いな、ハーノイン。彼女はもうすでに私との約束がある」 「え、そうだっけ」 「この間言っていただろう、もう忘れたのか」 アードライが割って入ったことに対してもそうだったが思い返してみればそんなこと言ったかも、と思い出す。 「あ、ああ、アレのこと、まあ善処するって言ったけどさ……あーわかったわかったからそんな目で見ないでよ」 わたしはひとつマドレーヌを齧った。 「王子様のために最善は尽くさせていただきますよ、なーんてね」 えー、アードライずるいー!なんて声が聞こえてきて笑い声が響く。そんな日常が続けばいいかな、なんて思ってたあの日。 |