※エルエルフきてから間もない感じごろ。一回やりたかった壁ドン。

急にエルエルフが来いと言うので屋上から飛び降り窓のヘリに飛び降りるとピッキングを駆使して窓のの鍵を開ける。窓をガラリと開けて三階の廊下に来てみればそこには彼と、そして驚く咲森生が何人か。誰だったかな、なんて頭を悩ませていればエルエルフが突拍子もなく人の心を抉り始める。

「お前、ファウツヴァイみたいなのが好みなんだろう?」
「エ、エルエルフ! 別にそんなんじゃ…!」
「やめろよ、エルエルフ! 本人のいる前でそんなこと、」
「さっきまで写真をみて表情筋を緩め、頬を紅潮させ心拍数をあげてあまりにも分かり易い奴だと俺は思っていた。好きなんだろう、ならば奪えばいい。お前がなんの訓練もなくぬくぬく育った一般人男性ならば、そこから導き出される結論は」
しゃきん、と彼はナイフを取り出したかと思えばわたしに切りかかろうとする。導き出される結論どころじゃない、とわたしは顔をしかめ、袖口からナイフを素早く手に握りしめる。しゃきん、と1度2度ナイフが交わり金属音が響く。エルエルフとの距離2メートル弱。手元にナイフをもつ2人が睨み合いを続ける中、いこごちの悪そうにする男子生徒の周りに少しずつ人が集まりはじめる。

「こいつを襲って自分のものにしてみろ」
手元からもう一本ナイフを出し男子生徒に渡そうとするエルエルフ。男子生徒が慌ててその手を拒否した。交渉決裂だ。ジオール人にたいして何してるんだこいつは。逆効果だ。

「か、勝てるわけないじゃないか! 彼女だって軍人だろ!」
彼の言い分は最もである。咲森生に無茶振りをするエルエルフ。わたしたちのような戦闘民族と、彼のような子羊を一緒の次元で考えてるあたり、まだまだ、彼は思慮がたりない。そしてデリカシーもない。これは元からかもしれないが、配慮がないのだ。遠慮の欠片もない。軍人として正しくあるべき姿が、ここ咲森では浮いた存在になっているのをまだ彼は気づかないらしい。

「意気地なしが。ファウツヴァイ、これは今後生徒の志気に関わる。こいつと一晩相手してやれ」
「いやよ、ここには女子なんて腐る程いるじゃない。夜の相手をするだけなら誰でも選びたい放題でしょう。わざわざわたしにする理由が欠落しているわ。あとそういう面倒事はわたしに押し付けないで、そういうのの担当はわたしじゃないわ。わたしは頭脳なのよ。肉体労働は他のやつに回して、ドルシアでもARUSでも性処理してくれる女の子なら紹介するから」

「こいつはお前が好きだ。ファウツヴァイ、お前のことがな。志気はこの国全体に関わってくる。つまりは、」
「どういうことかわからないわ」
「例えばこうだ」
ナイフを手元でくるくると弄ぶ。エルエルフとの間には緊張感があり一触即発。彼がこちらに敵意をもち、近づけはわたしも応戦する。しかし彼はナイフを床に置いた。わたしもしかたなくナイフを袖口にしまう。戦闘は無しだ。顔をあげれば急に壁に押し付けられ眉をしかめ抵抗を試みるも以外と力が強い。わたしの抵抗できないギリギリの強さで押し付けている。片腕で両手を頭の上に拘束されても、わたしは彼の意図を掴みあぐねていた。なにがしたいんだ、こいつは。……ただ殺意はないことは確かだ。

「なにが言いたいエルエルフ!」
そう言い終わるか終わらないうちに唇を塞がれていた。思わず目を見開く。エルエルフの舌が口内に入って、わたしの口の中を蹂躙する。呼吸が苦しくなり頬が上気する。徐々に手慣れた様子でエルエルフにボタンがはずされてシャツから下着が見えるか見えないかというとき、わたしは気づいたのである。右からすごい勢いと剣幕で迫る影に。

「エルエルフ! 女の子になにしてんだよ!」
時縞ハルトがわたしたちの間に割って入って来たのだ。いや、正しくは飛んで入ってきた。実際に飛び込んできたのだからそれ以外に形容しようがない。

「何って、実験だ」
「実験ってなんだよ!! だって軍人なんだからこんなところで襲われたらやだって言ってちゃんと抵抗しろよ!」
「エルエルフが何が言いたかったのか全くわからないままだったから理由を話してくれるのを待っていたのだけど、話してくれないものだから耐えかねて理由を聞いたら口を塞がれていたわ」
はぁ!? と時縞ハルトが、顔をしかめる。どういうつもりなんだエルエルフ!と怒号が飛ぶ。
「強いて言えば生徒の志気向上についてこいつを利用できないか考えていただけだ。他の生徒は温床でぬくぬく育ったただの羊だが、こいつは違う。先ほども言ったように男なら欲の捌け口として使えるものは使えばいい。こいつを抑えこめればキスやセックスなんて容易い」
わたしはゆっくりと外れたボタンをとめる。時縞ハルト以下多数が息を飲む。が、なぜそうも驚くのかわたしには理解できない。ぴっちりと制服を気こなせば、エルエルフがそうだろう?となげかけてくる。

「残念だったわね、エルエルフ。確かに正しくはあるけど、一つそれには欠陥があるわ」
「なんだ」
「わたしが勢いあまって相手を殺してしまわないとも限らないし、この通りわたしはナイフや銃や火器爆薬等で彼らよりも武装している。ぬくぬく訓練もせず育った連中に機関を優秀な成績で卒業したわたしが、力で負けるとおもう? 相手が素人だろうが玄人だろうがなんだろうが、わたしに襲いかかる奴は全力で排除するわ。それにさっきも見たでしょ、彼らジオール人はわたしたちのように何でもかんでも武力で抑え込まないの。不思議だとおもうけどそれが彼らよ。言葉をもって制すれば話は通じるけど……といっても第一に彼らに戦闘員としての力がないのが原因かしら。もっとも、エルエルフじゃここの男とは比べものにはならないくらい強いし……まぁ、いまのはちょっと油断したけど2回めはないわね。要するに実験は失敗よ。だって、他の個体よりも実験サンプルが強すぎちゃそれはそもそも実験の定義から間違ってるわ、エルエルフ。それはただの自己満足よ」
それに、とわたしは続ける。
「ジオールじゃ愛情のないキスやセックスは大多数の意見として否定的よ。両者了解がなければダメなの。あと武力に訴えるなんて野暮なのはもっと、ダメ。そんなことも知らないようじゃジオールじゃ暮らせないわね。悔しいなら本当にわたしを根本から陥落させてみるべきよ、できるものならどうぞご自由に」
生徒からおお、と声があがる。間違ったことは言っていない。事実だけを述べている。黙り込んだエルエルフが面白くて、クスクスとわらいがこみあげてくる。「言葉もないかしら? じゃ、用が済んだならわたしは戻るわ。じゃあね」

「……ま、待てファウツヴァイ!」
「待って、! ここ三階だよ!」

わたしはウインクして窓から飛び出すと伸縮性のワイヤーを駆使して上に飛び、屋上に着地する。なんだか今日はとても気分がいい。