※固定ヒロインとは別 嫁コレストーカーネタが少々からの捏造 、と名前を呼ばれて振り向いた彼女をぎゅっと抱き締める。ほんとかわいすぎるのが悪い。知らず知らずに彼女にのめり込む俺も俺かもしれない、でも彼女は潜り込むのが実にうまかった。そして、俺を地に落とすのも。奪いたくなる。ひどく放っては置けない彼女を愛している。いつかきた、ストーカー被害で悩んでいた彼女はこんなにも痛々しく色素がなくなっていた。綺麗だった黒髪はもはや白銀で、肌の色すら真っ白ではあるがうっすらとピンクに蒸気している。彼女はつくりもののようにうつくしかった。ストレスが彼女をこんなにも貶め、そしてその報復は俺の元に忍び寄っていた。 「好きだ、」 「それはわたしがこうなったから? それとも昔あなたに依頼をした、女の子だと知ったから?」首をこてん、と傾げている彼女は実に愛らしい。 「いーや、多分アンタが人形みたいに綺麗だからだな」 「そう、でも遅いわ?」 あのあと、聞いた話では彼女はまたしても被害にあっていた。何度も何度も襲われ、嬲られ、そして何人目かわからない犯人に監禁されてストレスでやつれているところをアートに保護されたのだそうだ。資産家娘はすぐに誘拐されるからボディガードのひとりやふたり、つけとけって何度も言われたはずなのに、彼女は自由を愛していた。なんて阿呆か、といえばそれまでだが、それでも外に出たいという欲望が彼女をかりたてた。外の世界に対する憧れが強すぎたのだ。まるで哀れな鳥籠の中の鳥のようだった。猫に羽を毟られても飛び立とうとする、なんと哀れな。 「…誰からでも奪ってやるよ」 「あら、殊勝ね」 こうしてコロコロと、表情をかえながら笑う彼女に俺は少しだけ嫉妬した。アンタ、誰を見てるんだ。俺だけ見てればいいだろ? どこ見てんだよ。どうしてこんなになるまで放っておいたんだよ。俺はこいつを本当に救えたのか? 本当に? 「好きだ、だから」 少し強引ではあったが何か言おうとした彼女の唇を塞いだ。何もかも、奪いとってしまえばいい。ああ、これじゃ今までの奴らと同じだ。彼女をこんなにも貶めた男たちと、まるで同じ。 彼らも同じだったのだろうか、彼女に魅せられて、そして地に落とされて行く。あぁ、鳥籠の鳥は、どっちなのだろうか。 |