レストランにてもぐもぐ昼食をとっていれば、すんすん、と後ろから息遣いが聞こえてどきりとする。何が起こったか状況をつかみかねている私だったが一つだけわかることは眼蛇夢くんに(すんすん)、と匂いを嗅がれているということ。いったいどうしてこうなったのかよくわからないが何事か彼の身に起こった気がするのは確かである。誰に何を吹聴されたかは聞かれずともわかるような気がしたのだけれども、それを聞いてはいけない気がして押し黙る。その間もすんすん、と匂いを嗅がれているらしく、だんだん気恥ずかしさがまさってきた。人が見ていてもお構いなしの眼蛇夢くんは自由すぎた。目の前の日向君に目線にて助けを求めたが彼は魚の骨を取るのに夢中だ。 「わが魔獣たちと同じ匂いがするな…」 (どうしようそれって動物臭い、ということでしょうか)と、一人混乱している私を差し置いて眼蛇夢くんはどんどん自論を展開していく。まさに田中キングダム。田中独壇場である。 「貴様まさか人間の姿をしているがまさか…実際は魔獣だとでもいうのか…?」 ふんふん、と一人で納得する眼蛇夢くんは「フン…我が田中キングダムの魔獣の巣窟に招待してやらんくもない」と私に向かって言い放った。ますますわけがわからくなって、ついにそこにいた日向君に助けを求める。 「ちょ、え…ちょ、日向くん通訳お願いします!」 「あ…なんだ…か、ごめん聞いてなかったんだもう一度頼む」 「日向くん通訳お願いします!」 「また田中に何か言われたのか?」 「えっとね…田中君は『フン…我が田中キングダムの魔獣の巣窟に招待してやらんくもない』って」 「あー、」日向君は少し考えるようにして、箸で魚の骨を皿のふちによけながら答える。「それはよかったら今度遊びに来いよって言ってるんじゃないか」 「フン…貴様のような匂いのする雌はなかなかいないからな…」 「ふえ…」 「ん…どうかしたか」 「いや、ちょっと恥ずかしくなってきたというかなんというか」んー、と頭をぽりぽりかく。「でもまあそこまでいってくれるんなら、今度四天王と戯れにいこうかな」 そう答えて眼蛇夢くんをみれば、すっとマフラーで顔を隠して「待っているぞ魔獣よ!」とかいいながら去って行った。べ…べつにちょっとどきっとなんてしてないんだからね! (▲)(20141024::これも一つの愛し方ソザイそざい素材)別所リクエストSS |