(※日向視点)

 「頼めないか、」俺は正直な話のことがよくわからない。「とりあえず、今日はと一緒に探索してくれ。一応俺も近い所には居るようにするし…なにかあったら声をかけてくれ」
 「フン…人間ごときが俺様についてこれるかな…!?」
 「お前についていけるかどうかはともかく、頼んだぞ」
 田中のことも正直わからないことだらけだが、に比べればそれほどでもない。月とすっぽんくらい違った。いや、キックボクシングと相撲くらい違うかもしれない。とにかく、この少しだけ個性の強い中でも彼女は少しだけ異なっていた。俺ですら一言も会話を交わしたことがない。ソニアとは違った意味でまるで人形だった。頭のイイやつの考えることなんて俺にはわからないな、と首を振り若干の不安を抱えながら採集に向かう。

 ぱしり、と何かをはたきおとしたような音がした。
 俺が慌てて駆けつければ、普段あまり表情のわからないが僅かに眉間にしわを寄せている。田中の方も一歩も引かず、1メートルくらいの感覚を保ったまま両者睨み合って動かない。田中の右頬が少しだけ腫れたように紅いのは、先ほどの打音はもしかして彼女が。

 「な、なにやってんだよ!」
 「部外者は黙っていろッ!」
 俺は田中に睨まれて、少しだけ怯んだ。俺が一歩後ずされば、田中はに徐々に距離を詰める。田中が何をするかヒヤヒヤして、ごくりと固唾を呑んだ。あと一歩か二歩でに手が届くところで、が一歩後ずさる。田中は構わずに、に手を伸ばした。ぱしん、とまた音が響いて、が田中の手を弾き落とす。しかし田中はその手首を叩き落された手で掴んだ。

 「何を恐ることがある。俺様の魔力だけに留まらずこのまま孤高で孤独な存在になろうとでもほざくのか。そんなものは俺様一人で十分に事足りる。反抗する魔力があるのなら少しの抵抗でも見せてみろ、人間」
 「……」
 「口もきけんのか…哀れな…せいぜい貴様もその程度か」
 「…君に話す言葉など何もない、分かったならわたしにかかわらないで」
 初めて聞いた声は、否定の言葉だった。やけに冷めたようなトゲのある物言いは、他者をまるで否定したように突き放す。ずきりとはっきりとした意志を持って突き刺さるような言葉に、俺は一瞬だけ頭が真っ白になった。そして、その伏せられた睫毛に先行きが少しだけ不安になった。



 次の日の採集のシフトをどうしようかコテージで必死に頭を悩ませていたとき、コンコンとノックの音が響いた。こんな夜遅くに誰が来たのかとドアを開ければそこにいたのは田中だった。一瞬だけ気まずいような空気が俺の中で漂い、反応が一瞬遅れる。

 「た、田中…、こんな時間に何の用だ?」
 田中が言うには、明日の予定は決まっているかどうかということらしい。まだだ、と俺が答えれば田中はと同じ場所にしろという。
 「…な、なんでだ? 今日は険悪な感じだっただろ…」
 「フン…その程度の観察眼しか持たぬ貴様には一生かかっても真実にたどり着く事はないだろうな…」
 「…要するにとなんとかコミュニケーションとれそうだってことで大丈夫だよな…」
 「どちらかといえば奴は人間でありながらにして魔獣達と非常に近い習性を持っている。俺様の手にかかれば手懐ける事など容易い…」
 「そ、そうか…じゃあ頼んだぞ」



 そして翌日。
 ぱちぱちと飛び散るような火花のような一方的な睨み合いに挟まれて、俺は胃が痛くなる勢いだった。やっぱり失敗したのかもしれない。と、を見て思う。その様子を見れば、あからさまに敵視してるのは田中のようだ。それもそうだ。昨日の今日で、同じ場所で、嫌な空気のままだった。どこも進歩してないじゃねーか、と左右田がここにいたらツッコミが冴え渡る筈だ。この状況にツッコミを入れられるほど、俺は能天気じゃなかった。けれどこの状況を放っておくこともできなかった。

 「…あ、あのさ」
 「何だ」
 「なんていうか、お前睨まれてるみたいだぞ」
 「フン…放っておけ」
 でも、と俺が発する前に、「田中くん」と横から声がした。「昨日はごめん、ちょっと言いすぎた。それだけ」
 「今日はやけに素直だな、悪魔の実でも食したかよ」
 「……別に」
 会話が行われていくことに、俺は少しだけ言葉を失った。俺も、多分みんなもこいつと話したことなんてないだろうと思っている。ぽつりぽつりとしか話さないものの、それでも少し田中の恩恵を感じる。みょうじにとって、とんでもない進歩じゃないのか…これは。

 「己の罪を裁きの輪廻に導くならば、この後少し俺様の余興に付き合え」

 さて俺の前でそのあと起こったことをありのままに話す。信じてもらえないかもしれないが、アレだ、これはどうやら事実らしい。俺が頬をつねったら事実痛かったし、まだ少しだけ赤くなっている。あのが、だぞ? 信じられるか? 田中ににっこり笑顔を向けて抱きついている。今気づいたことだけど、の笑った顔はとてもかわいい。

 「あ、ありがと!」

 目の前で惚気る二人に、ただ一言、言う言葉があるとすれば、これだ。
 リア充爆発しろ。















()(20120000::微笑んだジーニアスソザイそざい素材)別所リクエストSS