食べ物があるのではないか、とわたしは直感的に想った。もしかしたらあそこに食べ物があって、それでシ チューでもつくって毒を入れて。そんな極限状態のわたしたちにシチューがだされればみんな疑いもせずに食べて死んでしまうかも。多分わたしだったらおいしいものを食べて死ぬのだろう。今なら多分、そうだろうなって少しおもう。  わたしがその考えに思い至ってファイナルデッドルームに足を運ぶのに時間はかからなかった。シチューをつくって、食べて、死んだら、みんなここから出られる。わたしがひとりだけ死んで、それで終わる。ああ、でももしかしたら終里ちゃんなんか捜査中に食べちゃうかもね。それでもそうしてみんながまた生きていられるならそれでいいし食べ物があればもっと、いい。


 「どうしているの」
 そしてわたしは鉢合わせてしまった。ファ イナルデッドルームの中、そこに拳銃をこめかみにつきつけた田中くんの姿があった。「なにしてるの?」
 「それが定めだ」


 引き金を引くのを見ていられなくて、わたしが目を閉じれば、かちゃり、とからっぽの弾倉がひとつ回った。ぽい、とそれを投げてよこす彼になにがなんだかわからず首をかしげたが、わたしは次の瞬間に理解した。それは実弾のロシアンルーレットだ。外でで餓死するのをえらぶか、今ここでひと思いに死ぬのか、それとも賭に勝つのか。わたしはお腹も空いていたしもうどれでもよかったから、かちゃりと引き金を引く。それは思いのほか軽いモノで、かちゃりと軽い音がしただけだった。弾を確認する。それはひとつだけきらりとひかった。


 「モノクマちゃん、わたし途中で入ってきちゃったけどこれは有効?」
 「うーん、まあ本当はだめなんだけど今回は特別出血大サービスだからね? あと一発打って成功したら許したげるうぷぷ」
 田中くんが何を馬鹿な事を、と叫ぶ。わたしは気づけばこめかみに重厚を当てていた。ここで当たってしまえば、自殺ということでわたしがわたしを殺したことになってそれで学級裁判が終わる。そしてみんながここから出られる。でもそこでわたしは気づいた。


 「そっか…ここで死んでもだめなんだね…」かちゃりと引き金を引く。軽い感触がする。スカだ。はぁ、とため息をついて拳銃を置いた。「こんな所にあと2人も人が来るなんて考えられないよね」
 今日に限って、こんなところで運を使い果たしてしまったからたぶん食料なんてないんだろうなってわたしは我に返る。そんなことはわかりきってたはずなのに、またしてもため息がこぼれた。いっそここで死んでしまえればどれほどに救われたのだろうか。


 「これで満足かな? モノクマちゃん」















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