(田中くん殺しちゃった?太宰系自殺志願少女小話)



 「今回の犯人も犯行が可能なのも全部わたしなんです」
 「どうして! さんが田中さんを殺す必要は無かったはずです! どうして殺人を犯してしまったのです…そんな事、あなたがするはずないと…」
 そんなそんな、とぐるぐると呟く彼女に「ごめんね」と意味のない言葉をかける。そんなに想われてとても羨ましいくらいに。動機なんて簡単だった、知ってしまったからだ。わたしは早急に誰かを手にかけなければいけなかった。そう、思いこんでいただけなのかもしれない。なぜならわたしもそのなかの一人。もうわたしなんて生きる価値のないようないきものなのだ。狛枝くんと同じかそれ以下だった。


 「わたしが全ての犯行を行った事にして、もうひと思いに投票と処刑を始めて下さい」
 そんなわけにはいかない、と日向くんが言う。誰かをかばっているかもしれない、と。そんなこと 今更しても仕方ないのにね、とわたしはへらりと笑った。
 「それでは話します。先日のことです。疑うなら好きに疑ってください。わたしは急に全部を思い出してしまいました。絶望に落ちたわたしたちのことを罪木ちゃんと同じようになにもかも全部」
 ちょっと、それ以上はストップなんて声が聞こえてきた。わたしはその事についてはもう話しませんとモノクマに肩をすくめて告げる。


 「ふとした瞬間にもうそれは襲ってきていた。だから怖くて」
 わたしはその恐怖を思い出してまたふるえた。こんな、わたしも含めた殺人集団のようなもののなかに閉じこめられているなんて、とっても絶望的だ。わたしはため息をつく。少し深呼吸をした。


 「それで田中を崖から突き落として殺したってのか」
 左右田君の言葉に首を振る。それは正しいが間違っていた。
 「じゃあどうしたっていうの?」
 狛枝くんが言う。きっと彼は全てわかっているのかもしれない。見透かせないような何を考えているかわからないような瞳がこちらを向いた。わたしは続きを話し始める。


 「正確には突き落とした訳ではないの。そう、わたしがあの崖を登りおわって崖の下の海に落ちて死のうとしたところに、その手を伸ばして割って入った彼がそのままわたしの代わりに亡くなったかわいそうな事故。彼はわたしに生きろと言った。でもわたしはこんな所にいるのが耐えられなかった。一刻も早く死んでしまいたかった。もう 汚れてしまった両手は、どうやっても血のにおいがするの。薬やアルコールときっと同じ。表面はみえなくても一度汚せば、それは同じなのね。洗っても、それはぜったいに変わらない。眠ろうとしても眠れない。それと同じように死んでしまった人はもどらないし殺した事実は曲げられない。一度、いいえ二度それを背負おうとしたわたしは、それができなかった。それを背負うことが、とても重たかったの。やり直したいと想ったけど、きっとあなたはこんな絶望にとらわれるわたしを笑顔で見て居るんでしょう盾子ちゃん。とっても絶望したわ。でもね今のわたしは残念なことに以前のわたしみたいにもう絶望したくないの。不思議でしょ? それでもわたしがその場にいたのは本当だし曲げようもない事実で あるのに変わりはない。わたしが彼を殺したの。突き落としたと想われても仕方がない事だけどね、それでも死にたいのはわたしのほうだったのに。田中くんが、わたしに生きろと言ってわたしを引き留めさえしなければ、最後の瞬間に彼の足が濡れた岩場で滑らなければ」


 「そう、彼がこの世界で死ぬこともなく、わたしひとりだけが死ぬはずだったのに」














()(20121003:殺したのはわたしソザイそざい素材