(※未成年が喫煙したり悪いことしてる) ずるりずるりと沈んでいくような嫉妬と悔恨。すうはあと息を吸えばにがい味が灰に満ちる。別に吸いたくて吸ってるわけじゃないけど、暇だったし口寂しさも紛らわせる。はあ、と白い煙を吐き出せば、まるでそれはふゆの息みたいにしろい。はあ、どうしてこうなんだろう。男の人ってどうして着せ替え人形みたいに女の子をとっかえひっかえするんだろう。はぁ、とため息交じりに息を吐き出した。おもいきりそれを吸えば、器官に入り込んだ煙に息が詰まる。咽る。慌てて携帯灰皿を取り出して火を消して呼吸を整えた。はぁ、と荒い息を落ち着かせてタンクの上から下に飛び降りる。 「うわ危ない!」 寝転がる男子生徒のうえに見事にダイブしたわたしの下でごふ、とうめき声があがった。屋上のワンスペースはわたしの絶好のサボりポイントなのに今日に限って誰か同席しているらしい。いつもはこの時間誰もいないのに、と思いながらツイてないとため息を吐いた。わたしは跨っていた男子生徒の上から退いて傍らで彼をつつく。 「もしもーし、大丈夫ですか―」 「…う、俺様の眠りを妨げるとは…貴様何者だ!」 「みょうじ」 なんだか新参者は厄介な奴みたいだ。妙なうめきを上げれば「この副作用を知っているか」と問いかけられてはぁ、まあ知ってるけどと答える。そんなもの知らないで吸えるかっていう話なんだけども彼はそんな事気に留める様子も無く話しはじめた。もとよりわたしの意見に耳を傾けるつもりはないらしい。 「いいか、人間にとってその黒煙は害悪をもたらす厄災の源だ。その根源を断つこと、それは永久の月日を要する過酷なものと聞く。一刻一刻と身体を蝕むような魔物を身体に取り込んでいるようなものだぞ…貴様だけならばまだしも俺様の暗黒四天王まで巻き込むつもりか」 「まあ別に好き好んで吸ってるわけでもないけど」 「何故無益な事をする」 「別に初対面の君がどうこうって話でもないしさ、わたしの身体なんてさどうなったっていいよ」 「なん…だと…!」そこで新参者はやけに驚いたような表情を浮かべる。つられてわたしも驚く。なんでこの人驚いてるの。「貴様は愚かだ、そうまでして己の天命を削る事の何が目的だ」 「意味なんてないよ、ただちょっと口が寂しいだけ」 そこで新参者は少し押し黙る。「いいか、その双眼を固く閉じろ」 こう? とわたしが口を開く前に口を塞がれる。 「これで満足か、小娘が」 ニヤリとしたニヒルな笑みに口の中が少し甘くなる。 ああ全部この苦さと共にぜんぶ溶けてしまえばいいのに。 (▲)(20121001:甘いだけならニコラシカソザイそざい素材) |