ぱちり、と瞬きをすれば一瞬だけ視界が暗転する。瞬間的に訪れては消えていく黒い視界。どうしているか分からないようなわたしのかわいい妹も、一瞬だけは世界から切り離されるわたしの中から消える。どこかわからない不思議な世界は、さながらアリスのようだ。不思議の国に迷い込んだアリスたち。精神的な面からの考察なんかとびかって、韻を踏んだお遊びがふんだんに表現されている。わたしたちはアリスなのか。だとすればあのウサギは時計ウサギのモチーフから引用されているのだろうか。へんなの、とわたしが呟いたと同時にわたしのいる場所に影が落ちる。


 「人間、そこで何をしている」
 「答えることでもないかな」
 「答えられない…だと…、まさか貴様は人間に紛れアトランティアの情報を地獄の使者に密告する邪眼使いかッ! 混乱に乗じ俺様の情報を…」


 はぁ、と訳もわからずに相槌を打てば彼はふむむ、と唸りながら何やら呪詛のような言葉を引き続き呟いている。わたしには何を言っているのかさっぱり分からない言葉ばかりが頭の上を通り過ぎていく。あんこくのなにかのあくまが。これ以上彼の言うなんたらアトランティスの謎の呪詛を聞くのも骨が折れると考えたわたしは「海を眺めていたの」と答える。
 ぶくぶくとこのまま沈んでしまう事ができたらどれほどいいだろう。何も考えずに何もない世界で。海の底に沈むの。














()(20120907:レプリカ・ブラックソザイそざい素材