さっきまでコテージでごろごろしていたのだけれど、お腹が空いてきたのでレストランに行けばそこには先客がいたようだ。 (あれは九頭龍君かな…) なにか探しているみたいだけどいつもと様子が違うみたいだ。きょろきょろとあたりを見回して、少しだけ挙動不審に見える。座っている前の皿はどうやらあまり量が減っていないように見えるので何か考え事でもしているのだろうか。九頭龍くんとはまだあまり話したことはないから、何を考えているのかはまだイマイチ理解できない仲である。ウサミちゃんはらーぶらーぶと言っていたけれど個性あふれるこの人たちと短期間で仲良くなれるのか…といえば少し不安だ。 「どうしたの九頭龍くん」 「べ、別になんでもねぇよ!」 ほっとけ、と言われてふうん、と受け流しながらわたしはキッチンの方から奪ってきた朝食を歩きながらもぐもぐとほおばっていた。今日のお皿に盛ってきた朝食はサンドイッチ。ハムサンドとツナサンド、それからスクランブルエッグにつやつやしたソーセージとフライドポテトとサラダだ。フォークでソーセージをさせば、ぴくりと九頭龍くんが反応する。なんだかやっぱり今日の彼は少しだけ様子がおかしいみたいだった。私でもわかる。何か悪いものでも食べたのだろうか、ほっとけという割に目線は少し泳ぎがちだ。 「ね、どうしたの? 」 パリパリ音のするソーセージはジューシーで肉厚だ。ただ少しだけ味気ないのが減点だ。こういう時に限って花村くんはどこかで油を売っているみたいでキッチンにはいないようだし困ったものである。 「………今日の採集後だけどよ、時間はあるか?」 「ん? 今日はまだ誰とも約束してないよ」 「…時間空けとけ」 「…ん?」 「時間開けろっつってんだよ! …いいか、分かったか…」 「お…おぉ…うん」 九頭龍くんの極道らしい迫力に少し気圧されて突き刺したポテトを落としそうになった。九頭龍くんはそれだけ言うと何もなかったようにじゃあなと去っていってしまったし、わたしはその衝撃でその後日向くんに声をかけられるまでレストランに立ち尽くしたままだった。わたしが九頭龍くんと仲良くなれるのかどうかは神のみぞ知る。 (▲)(20120000::戸惑いの瞬間ソザイそざい素材)別所リクエストSS |