「落ち込む気持ちも分かるけどよ…そんなんじゃァお前の身体がもたねぇぜ」
 「知ってるよ、」相変わらず私の目線は遠くをあてもなくぼんやりととらえていた。「でも悲しいの」
 九頭龍君の慰めがなんだかとおくのもののような気がして、そんな自分が今どこにいるのかもわからないままに人の死だけが積み重なっていく。祓魔師というだけで、なんだか少しだけ会話の弾んだ田中君はもういなかった。


  「ね、九頭龍くん これからまた人が死んじゃうのかな」
 「死なねぇよ…って言い切りてぇけどなそりゃ俺には分からねぇ…だけどよ気持ちまで折れちまったらアイツだって悲しむだろ」
 「そうだね、ちょっとでも関わった人があんなふうに死んでいくなんて、なんだか変な感じ。さっきまで動いて息をして笑ってたのに、もういまは半分以下になっちゃった。でもねわたし思うの、だから人って一瞬を一生懸命生きてるんだろうなって。次の瞬間に死ぬんだとしても、後悔しないような生き方がしたいって思える。そういうの全部含めて、守れなかった後悔も変な話だけどちょっとだけ感謝もしてるの。生きるのってどうでもよかったわたしに、体を張ってそういうことを教えてくれて、こんな状況なのにそういう状況だからすごいなって単純に思えた。なんだか言いたいことうまくまとまんないんだけどね」
 「……
 「しんみりしちゃったね、ごめんね。でも多分これだけ気持ちが吐き出せたからわたしはもう大丈夫。聞いてくれてありがと九頭龍くん」


 わたしがへらりと笑みを浮かべて立ち上がれば、九頭龍くんも砂を払って立ち上がる。それでも、この思いだけはこっそりと胸にしまっておこう。もう、伝えられないひとのために心の底で鍵をかけて。















()(20121002:咲かず実らず朽ちてゆくソザイそざい素材