「お話がありますみょうじさん」 超高校級の王女様々があまり関わり合いのないようなわたしに何か用でもあるのだろうかと首をかしげる。普段採取でも奇跡的に今まで場所のかぶらないわたし達は全く接点の 無い分、会話も他の女子に比べれば少なかった。友好を深めるのも悪くはないとは思うけれど今のタイミングは問題だ。深夜に女の子が出歩いては危ない。 「なに? ソニアちゃん」 「みょうじさんは田中さんと日向さんのどちらがよりアンテナに近いと思いますか?」 ドアを開けたところで突拍子もない質問をしかけてきた王女様は冗談特有の雰囲気をまとっているわけではなく、どうやらその言葉自体は本気で言っているらしい。アンテナっていうことはちょっと突拍子もない『電波』な不思議ちゃんのことを指すのか、それとも髪型のことを指すのか渡しにはどちらか判断はつかなかった。そもそも寝起きでネグリジェのわたしには、その言葉だけでは少し判断材料が乏しい。 「とりあえず立ち話も風邪ひいちゃうから入る? 夜は冷えるし」 「よろしい! 失礼つかまつります!」 奇妙な日本語を度々交えながら、ソニアちゃんは部屋に入って椅子に腰掛けた。深夜だと言うのに彼女はきっちりとした服装でわたしは一枚カーディガンを手にとって羽織る。 「 夜分突然押しかけてしまい申し訳ありません。ところがどっこい…私気になって仕方がないのです。これは今後の将来、私の命運を分けるような選択になること間違いないのです!」 「そんな重大な選択をなんでまたこんな時間にわたしに?」 「それは重大な秘密を他の人に知られるのは憚られるからです…! そんなの当たり前田のクラッカーですよ」 「はぁ」わたしはあくびをかみ殺しながら手で口を押さえる。王女様の前であくびはなんだかマズイ気がした。でも眠気は襲ってくる。理不尽である。「お茶入れるね」 適当にペットボトルのお茶をコップに注いでソニアちゃんに渡す。やっぱり話し合いには何か飲み物が無いと喉が渇くのだ。ソニアちゃんは 礼儀正しくありがとうございますと言うと口を開いた。 「実は国の古い言い伝えにこういう事があるのです」 かくかくしかじか。 「というわけで、最近まで田中さんがそうかと思っていましたが、どうやらその理論で行くと日向さんも当てはまることになります。そもそも田中さんはごくありふれたようなお顔立ちではありませんし…」 「じゃあ日向君が国を救う救世主になるって事かな…」 「…やはりそうなりますね! 私の推測は間違っていました…日向さんこそ共に黄金のマカンゴを手にする人だったのですね! ありがとうございましたみょうじさん…このご恩は一生忘れません! では失礼つかまつりました」 なにやらよくわからなかったけれど嵐のように来た来訪者は嵐のように去っていった。そしてわたしはほっとしてしまった。なぜってそれはわたしが田中君のことをあいしてしまっていたから。ああ、なんて下劣な。 (▲)(20121002:裏切りは口の中ソザイそざい素材) |