▼gomibaco
あのいまわしき絶望のなんたらかんたら事件までにいたり、その後の隔離幽閉疑惑にいたるようなノアの方舟計画に賛同してここにきた。そのはずだ。そのはずなのに、なんだこの初対面の雰囲気は。なぜ和気あいあいと初対面じみた演技を、迫真の演技をしているのだ。私は首をかしげた。なぜみんながみんなして私の事、いや、みんなの事を覚えてはいないのかが全く分からない。みんな揃って現実逃避なのだろうか。私という超高校級の自堕落がみんなの事を覚えているのに。絶望のせいなのだろうか。絶望の一人をちらりと怪しまれない程度に見る。お家に帰ってお前らが一緒に写ってる写真持ってきてやろうか、と思ったくらいだ。なんてこった。思い出せないというのか、これも絶望の仕業なのか。
(御曹司)
「ふん、お前ごときが許嫁などとはよく言ったものだ」
「面倒事ばかり私に押し付けて何を言うか、不埒者め。身の程をわきまえろ」
「なんだと…」 ぐるぐる、と睨みあう犬のようにこうちゃく状態が続く。ぐいぐい、とだんだん顔が近づく。「許嫁の分際で…」
「顔が近い!」と私が十神の頭に頭突き。ごちん、と音がして十神が頭を押さえながら一歩後ずさる。「何か用があるなら後で言え」
「…くだらんことに俺を巻き込むつもりか」
「これは私の計画ではないからわからない」
(暴走族)
彼の方は私に対して初対面だと思い込んでいるようで、なんて入学のときと同じ言葉を言っている。やっぱり人間というのは根本的なところで一致しているらしい。
「ありがと、紋ちゃん」
もんちゃんだぁ? と疑問符。ぴきぴき、といらいらとした音がする「俺のことかぁ…?」といらだった声。でも大丈夫、「だめ?」と首を傾げればトドメだ。
彼は女の子に弱い。「う、悪かね―けど」と引き下がる。なんということだ、反応が一緒である。なんとも新鮮でかわいい(といったら怒られるだろうから口をつぐんでおこう、私が実はIQ200以上測定不能ということも口をつぐんでおこう。絶望程度の頭の悪さではこの私の記憶を消そうなどと百万年早いわ。馬鹿め。
(野球)
「なあなあ、」と桑田君がさっそく彼女によっていくのが見える。「俺、桑田怜恩ってんだけど」
彼女は卵焼きを箸でつかんだまま、桑田くんを見つめている。
「私の卵焼きが欲しいって言ってもだめだよ、あげないよ」
「そういうんじゃなくってさ、」
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