(あけぼのに染まる夢)




 朝焼けが眩しいな、なんて思って窓を開けた。
 きれいな色、表現力が乏しいからそんな言葉しかかけられないのがもの悲しい。私が彼に大好きと伝えて、彼と付き合うようになって早四ヶ月になろうとしていた。ドイツと日本という遠い遠い国境も離れた所で、私は一人遠距離恋愛をしていた。友達があんな奴やめなよ、なんて言う中で私は彼を諦める気が無かったのだから嫌な表現をすればとても諦めの悪い女だ。油のようにどろどろと流れる感情を止める事が出来なくて、私は振られる覚悟で彼に告白した。十一月。
 そう、彼がドイツに行くのは知らなかったけれど偶然に偶然が重なって彼がドイツに行く前にめでたくして恋人と呼ぶような関係になったのも全て運命と言う簡単な言葉で片づける事が出来る。でも実際はそんな簡単に四文字なんかで表現していいものじゃあ、ない。絶対にない。断じてない。そう言いきれる自信はある。だって私がどれほどの思いで彼に告白したかなんてどうせ言ってもわからないじゃない。


 「君もこのあさやけを見てるかな」
 きっと私は遠距離恋愛に向いているんだと思った事がある。待つことにも恋焦がれる事にも、私は刺して抵抗は無い。むしろ逢えた時の喜びが、二倍にも三倍にもなるから絶対に普通に付き合っている人より長く続くと思うんだ私は。あくまでも個人的な主観から物事を見たことしかいえないのが玉に瑕なんだけれど、きっと彼も私と同じ気持ちのはず。
 だってそうでしょ。そうじゃなかったら付き合ってくれるわけがないもの。


 元気でいるかどうか、私には何となく分かる。
 テレパシーでもエスパーでもないけど国際電話という世も便利なものが出来たからで大抵の場合はお父さんがぷっつんときってしまうこともあったりしてそれで親子喧嘩になったりもするけれど、それはそれで置いておく。もちろんその後に謝りながらかけ直すのが私だ。口論を散々したあと、父親はむすうっとしてそっぽをむく。目をあわそうともしない。
 全く子煩悩な父親だと苦笑しながら私は、電線一本で世界とつながる魔法の機械で彼と電話する。




 リンリン、と丁度ベルが鳴った。
 これは電話の音だと思って私は履いたスカートのチャックを閉めながらドアをお行儀悪く開けて、とたとたと階段を下りる。幸い、私が一番に気づいてここに着たので、先日のような父上先に受話器取る事件は免れた。私はどきどきしながら電話の受話器をおそるおそる取る。


 「もしもし、です」
 『燎一だ』
 「燎一!」
 思わず私は叫びそうになって声を殺す。まだ起きていないだけであって、両親は家にいるのだ。下手に叫び声をあげては怪しまれてしまう。寧ろ電話線を切られかねない。


 「久しぶり、元気そうでよかった」
 『俺も、が元気そうで安心した』
 私はその声を聞いて頬が緩む。
 「調子、どう?」
 『ようやく、こっちの言葉が少しずつ話せるようになってきたな』
 彼は受話器越しにそう言って、ふっと笑った。
 「すごい、ドイツ語って発音がすごく難しいのに」
 『巻き舌ができないと苦戦するよな、』燎一はくすくすと笑った。『最初は全然だった』
 「燎一も、そういうのあるんだ」
 『俺にだって、苦手なものの一つや二つ』
 「わかってるよ、最初に聞いた」
 私は彼の言葉をさえぎって、返答を返す。口を尖らせて言っていただろう彼は、ふうと息を吐くと言葉を繋げた。


 『ほら、今日何の日かわかるか』
 「え、急に言われても」
 私は考える。四ヶ月記念日、いやそれは燎一の柄ではないし私の誕生日は全く違うし燎一の誕生日は十一月だ。何の日だろうと考えていたら燎一が先に痺れを切らした。
 『ホワイトデーだ』
 「あ、そっか」
 バレンタインデーは私からサプライズで電話したんだっけ。と一ヶ月前の事を思い出す。憶えていてくれたのかと言う嬉しい想いがむくむくと胸の中で芽生えて幸せな気分で私をいっぱいにする。
 『だから、と話がしたかったんだ』
 「ありがと、燎一」


 私は火照り始めた頬を冷たい手で触りながら受話器をぎゅうっと握り締める。


 『好きだ、
 「私も、燎一が大好き」















(20100316)ああああああああ甘い!眠い!それでも生きるそれが私だ。(意味が分からない)