平穏無事に暮らす事が出来ているかといえば、それは肯定することの出来る事実であり真実である。鬼である彼女に、鬼と自覚をして自認してしまった彼女に平穏という言葉があるのかどうかは兎も角として、彼女の生活が激変というほど激変したわけではなかったが人間関係だけをとって見ればそれは激変と言っても過言ではないくらいには激変していた。
 それこそ、突然に唐突に訪れて嵐のように畑を荒らして去っていく。
 単純にして、至極明快。


 「ねぇねぇ、はるりん」
 「はい」
 「はるりんはそれでいいの?」
 「勿論です、何か異論でもおありでしょうか?」
 「ううん、僕様ちゃんはないよ。それこそふりふりのコスプレでもしてくれれば、なおよしって所だけどね」
 ね、はるりん。と青色は言う。《春霞》から『はるりん』、という安直な愛称だが、は全く気にした様子もなく全く動じた様子もなく、青色の前にちょこんと正座をして座っている。本来ならば、彼女が訪れる場所ではないが主人の繋がりから繋がらざるを得ない関係。


 「うーん、でもお願いしたのは上だからねー。どうしようもあったといえばあったんだけど、止められないし」
 「本来ならば匂宮の管轄では、」
 「そうなんだけど、そのへん色々と関係がごたごたしてて面倒なんだよねー。それこそ、そんな面倒なこといちいち上が引き受けるわけがないんだよ。そもそも縁を切ろうとかなんとか言い始めたのがノンノンだからもうこれは駄目だなー、とか思っちゃったけど。はるりんには別に悪い所は一つもないから安心してもいいよ」
 「……」
 「そうそう、はるりんがきたら着てもらおうと思って持ってきたんだよ。じゃーん」
 「……」
 青色が取り出したのはふりふりに改造された制服。制服のような材質でありながらまるでそのシルエットはさながらただのゴスロリのようなものに見える。どちらかといえばメイド服のようなもののように見える。一瞬だけは体をこわばらせたが、直後にはぁ、とため息をついた。
 「またですか」
 「えー、いいじゃんいいじゃん。だってはるりん似合うんだもん!」
 「まあ、別に悪いとは言ってはいませんが」
 「よし、じゃあ決まりね!」
 にっこり笑って、青色は笑う。
 「うに♪」


 (そうか、)
 (やはりこうしている事が、)
 (嬉しいのかもしれません)
 わずかに頬の筋肉が緩んでいるのを認識しては自分も物好きになったものだと自嘲する。まあなんと言われたところで、結局の所青色に進んで逆らおうなんていうつもりは全く無いのだ。世界に影響力を及ぼしている機関にいたとしてもいなかったとしても、彼女はにとってやはり大切なものである事に変わりはない。
 (友達というのは、)
 (こういうことなのかしら)
 はそこまで考えて、目の前で微笑む少女から仕方ないという表情でこれをきるのは今回だけですよといいながら衣服を受け取る。青色は満面の笑みでほくほくとしながらうんうん頷いた。
 (私は、)
 (この人に対しては、とことん甘い)
 確か、あの人もそうだったと思いながら、ああやっぱりみんな甘いんだと心の中で笑う。















(20100404:ソザイそざい素材)やっぱり友ちゃん出すからにはコスプレは必須ですよね!