クリスマスはホワイトクリスマスだった。今年もふわふわと降り注ぐ雪を眺めながら、二人で過ごすなんて幸せな出来事を妄想しながら結局のところ一人で彼の事を思いながら買い物に興じていたのだから周りを歩くカップルがどれほど疎ましかっただろうか。彼が隣にいてくれたら、よっぽどよかったのに、と思いながら、私はベッドの枕元に転がるプレゼント包みを眺めながらはぁ、とため息を吐いた。



 あれから数年が経って、高校も卒業して、彼はプロリーグへの道を着々と進んでいく中でわたしは悶々としながら事務職に就いている。夢が無かったわけでも無いけれど、やっぱり生活費は必要だった。なんて、リアルな話だけど。クリスマス過ごせなかったのも、その日が試合だったからに他ならず、やっぱりサッカーしている大地はかっこいいから夢を応援したいとは思う。思うのが本音だけれども、ちょっとだけわがままいうならば、一緒に過ごしたかったなんて言うのが本音で。こんなずるい自分にため息を吐くしかやっぱりなくて。そんな事を考えて過ごしていたらあっという間に年末は迫っていた。そう、明日は大地の誕生日だ。






 「やっぱり実用品だよね」
 これは長年の付き合いから分かっていたことで、散々悩んでよさそうな万年筆を選んだ。店員さん一押しの品だ。かわいらしいラッピングに包まれたそれを大地が持っているのを想像するだけで楽しいと言うかなんというか。大切な人へのプレゼントを選ぶのはなかなかに難しいけれど、受け取った人の気持ちを考えながら選ぶとやっぱり楽しい。人の喜んでいる顔というのはやっぱり、好きだから。



 ぽちり、と年末放送枠に切り替わりつつあるテレビをつける。時事的な芸人のおもしろおかしく振る舞ったネタが流れていく。ぼんやりとそれを聞き流しながら窓の外を見れば、雪がしんしんと降っている。外は寒いだろうなと想像して、ぶるっと身震いした瞬間に、同時に携帯が震えた。大地からだ。通話ボタンを押す。



 「もしもし」
 「もしもし、俺だ」 どうしたのだろうか、急に連絡してくるなんて珍しい。なんて思っていると、彼は続けて理由を話しはじめる。「クリスマス、試合だとはいえ済まなかった。恋人だったら一緒に過ごすべきだったのかもしれないが、あいにくの所インタビューやら何やらで結局夜中の三時にしか帰れなくてな。……そのような時間に連絡をして起してしまうのもすまないと思ったんだ」
 「あ…うん……私こそ連絡をいれればよかったね」
 「いや、お前に非は無い」大地は少し優しげな口調で言う。「だから、今日、もし暇なら一緒に過ごしてくれないか? 俺の誕生日まで」



 (どきり、) 
と心臓が震えた。



 「え」
 「今、お前の家の前に迎えに来たんだが、迷惑だったならそのまま帰る」
 「ちょ、ちょっと待って! 今すぐに準備する! 5分で行く!」



 大地がフッと笑ったような、そんな雰囲気がした。「待っている」と、ただ一言だけで電話は切れて、私が慌てて化粧と余所行き用の衣装に着替えたのは言うまでもなかった。クリスマスじゃなくても、やっぱり一緒にいるだけで幸せなのかもしれない。私はばたばたとしながらプレゼントを鞄に詰め込んで部屋を出る。






 (お誕生日おめでとう!)
 その言葉を胸に秘めて。















(20112128:ソザイそざい素材)ふわくんはぴば!! 今年は祝えたよかった!