「ちゃん、久しぶりだね」



 そこには、私のずっとずっと追い付けなかった人がいる。どきどきして、顔が上気しているのがなんとなくわかって、心臓がばくばくと鳴り響いている。ぎゅうぎゅうと締め付けられる胸の不安感も、ぜんぶぜんぶこの人のせいだった。原因になったカカシ先生を横目で睨めば、「おっと、用事を思い出しちゃった!」なんて言ってその場を立ち去ろうとする。私が手をぎゅっと掴んで逃がさないと「後は若い二人でごゆっくりどーぞ」



 「あ、あの……」
 「とりあえず、お茶でも飲もうか」



 にっこりと笑顔で笑う、テンゾウさんは、まるで太陽みたいにきらきらしていて、









 「ご注文の品です」
 「どうも」



 すうっと前に出された団子に、新しく出された湯気の出るお茶。そして、先ほどの怪しかったカカシ先生の陰謀はこれだったのかと、私は嬉しいような恥ずかしいような、分かっていたつもりなのに不安になる。本当に食えない人だった。私ごときの考えなんてお見通し、なんてね。本当に嫌な先生。でも、心なしか喜んでいるような私もいて、何だか複雑で、全部がごちゃごちゃになってしまったけれど、やっぱり一つはっきりしていることは。
 私が、テンゾウさんにあこがれていて、だいすきだって、ことくらいで。



 「ちゃん、団子でよかったよね」
 「はい」
 「しばらく見ないうちに、また可愛くなっちゃって」
 「……! そ、そんな、ことは……」



 冗談だと、社交辞令だと分かっているのに、恥ずかしくて語尾が小さくなってしまう。(あうう、)言葉を濁していれば、ケラケラとテンゾウさんの笑い声が響く。頬杖をついて机に座るテンゾウさんは、ちょっと絵になって、やっぱり惚れたほうが負けなのかな。なんて考える。やっぱり笑ったらおひさまみたいな笑顔だ。きらきら。かがやいて、きれい。





 「変わってないね、ちゃん」
 「テンゾウさんも、変わってないですよ」



 (笑顔がきれいで、おひさまみたいで、)
 (わたし、テンゾウさんの笑顔、いちばんすきです)



 やっと作れた笑顔で笑うと、こりゃ一本取られたな、とまた笑う。



 「じゃあ、ボクの事は嫌いじゃないってことでいいかな?」



 どうしてこう、駆け引きのうまい人が多いのだろうか。やっぱり、忍者なんだな、と改めて思って。恥ずかしくて泣きそうになる気持ちを抑えながら、私はこくんと、目を伏せて俯いた。わしゃわしゃと心地よいてのひらが、私の頭を撫でる。









 (ああ、まるで、ゆめみたいだ)















(20112128:ソザイそざい素材)暖房つけたつもりだったのに冷房だって気づかなくてエアコン壊れたかと思った 寒くて手が凍りそうなむなむ……睦さんリクエストのテンゾウ(だいぶ遅くなりましたが…覚えていらっしゃるかしら)テンゾウが難しくて難しくて震えた…! そんなこんなでテンゾウさんでした!<