「静雄さーん、静雄さーん」 「おう、何だ?」 事務所の前に行けば、静雄さんがいるので私は普通に声をかけた。私が静雄さんの所に入り浸るようになったのは、やはり理由があるわけで、一般人であったらかの『平和島静雄』とは関わり合いになろうとは思わないだろう。一般人でなくてもできれば関わりたくない部類に属するかもしれない。その一般人でない部類に入るのが、恐らく私だった。そんなこんなして、今の現状も悪くは無いと思っているのだから余計にたちが悪いのかもしれない。私がチラチラと静雄さんと居るところを目撃されているせいか、妙に学校で一部生徒に煙たがられているのも絶対にこの人のせいだ。でも、まあ悪くないと思っている。価値のない同級生より、価値のある平和クラッシャー平和島静雄さんのほうが何倍も素敵だ。それはさておき。 「これ、トムさんに。私の父親から書類です、と言えばだいたい予想着くと思いますが」 「おう、ありがとな。……トムさんまだいないし、もし時間あるなら茶でも飲んでくか?」 「では少々お邪魔させていただきます」 にっこり、そんな効果音の尽きそうな笑顔を浮かべながら、ほいほいと私は静雄さんについていく。カンカン、と階段をのぼって私の前を行く静雄さんがドアを開けると同時に久しぶりに事務所のにおいがした。全然変わっていないことに、少しだけ安心して、心が落ち着く。 「わぁ、久しぶりですね。こうして事務所まで来るの」 「…そうだったか?」 答えながら静雄さんは器用にポットからお茶を入れる。さすが元バーテンダーの手つきで、流れるように二人分お茶を湯呑へと入れると、ほいっと運んできた。私はありがたく「どうも」と、お茶を受け取り、口をつける。ずるずる。 「そうですよ、普段は静雄さんに会うの、池袋で不良に絡まれてるときくらいですもん」 「いや、お前はそれ何とかしろ! 不良に絡まれてる時しか会わないみたいじゃねーか」 「そうじゃないですか、ちょっと考えてみてください」 「……いや、……そういえばそんな気もするけどよ、毎度毎度出くわすたびに不良に絡まれて金渡してるお前が悪いんだろーが」 「そうでしたっけ…?」 「どっちもどっちだからな…!」 「静雄さんに言われたらおしまいですね」 やれやれ、と私は首を振った。 (20112128:ソザイそざい素材) |