戦いの中に身を置く者として心得ておかなければならないことはいくらでもある。だからこそ覚悟を決めなければならない時だっていくらでもあるのだ。わたしはさっと身をひるがえして、敵陣の前に躍り出る。敵はざっと数十人。地の利ではこちらの方が勝ってはいるが人数では負けている。ありあわせの人数のスリーマンセルとはいえ、チームワークと敵情視察に関してはシカマル君のおかげもあってそれなりのものだった。わたしが飛び出した事によって敵の視線がこちらに集まったのを確認すると同時にクナイを全て敵の急所に向けて投げる。相手は避けようとしてその場から動こうとする。


 しかし、できない。
 跳んで避ける事すら出来ず、動く事すらままならない。


 影によって縛られ、影に操られているので動く事なんてできるはずが無いのだ。彼は技を発動すると同時に、上に向かって合図をする。ナルト君が上から影分身で降ってきて、敵陣をなぎ倒しに掛かる瞬間にシカマル君が術を解いた。さくさくっという音とともに敵の急所を少し外れた所にクナイが刺さる。生け捕りってもう少しいい方法ないのかな、とわたしはシカマル君に言ったのだけれど彼は「一番手っ取り早いだろ、」と言う理由でこの方法を通した。まあ、相手が相手なものなのでわたしは「ふうん、」とこの方法をりょうしょうしたわけなのだけれど、






 「ま、こんなところだな」
 ナルト君が敵を全てのしたところで、シカマル君が生け捕りにされた敵をぐるぐるに縄で縛る。シカマル君が立ち上がって、通信機で木の葉に連絡を入れた。そういえば任務完了後に連絡を入れてここで待っていれば暗部が来て回収してくれるとか何とかそんな話だった気がする。「あー、シカマル小隊。任務終了しました。回収をお願いします」ああやっぱりシカマル君ってすごいなあ、なんてぼんやりとシカマル君を見て思いながらわたしは敵だった人たちに視線を移した。ざっと十人、いや十一人だろうか。通信機から「了解した」と短い返事が何となく聞こえる。あっという間に終わったなあ。
 「ナルト様の大活躍だってばよ」
 「ふふ、そうだね」


 実際の所、決め手となったのはシカマル君の理論的かつ合理的なスリーマンセルの戦闘理論における状況判断力によって立てられた具体的な奇襲作戦とナルト君の多重影分身による追撃のおかげなのだけれど。わたしは誰でも出来るようなおとり役くらいしかできなくて、やっぱり格がちがうのかななんて思うと少し悔しいような気がする。でもまあ仕方がないかな、なんていうのはただの逃避なのかもしれない。シカマル君が一通り状況を連絡し終えると、「はぁー、だりぃ」とあくびをした。


 「まぁー今回は二人ともナイスアシストってところだな」
 「作戦がよかったんだよ」
 「んーでもなんだかあっさりすぎて逆にすっきりしねぇっていうかよ…」
 「俺らの請け負ってる任務はこれだけだ、暗部が来たらとっとと切り上げるぞ」




 はーい、とおのおの返事をして暗部が来るのをぼんやりと待つ。


 ああ、
 そうだ、このふたりなら、










(20100409:ソザイそざい素材