「あ、ナルト久しぶり」
 「がぶらぶら外歩いてるの珍しいってばよ」
 「ちょっと任務帰りで」


 私が通路の脇に寄りながら、そう言ってにこりと微笑むと彼はふうんと相槌を打った。そして表情をころりと変えると「そういえば、思い出したってばよ」なんて言ってころりと話の種をまく。私は、ナルトの話に耳を傾けながら今日の出来事と任務内容について回顧していた。考え事をしていると言葉が耳から入ってこなくなるのが不思議だった。だんだんと声が遠のいていく。


 今日の任務はツーマンセルでの敵地調査。特に危険ではない区域で、暁のいくつかのアジトのうちの一つについての実地調査だったのだが、なんとなく足取りがつかめたようなつかめなかったような曖昧な結果しか得られなかった。任務としては若干の情報があったので成功と見てもいいかもしれないが、どちらかといえば、失敗に近い任務だった。こんな頼りない結果が何かの役に立つのだろうかと考えたところで私には分かるはずがなかった。そもそも推測するための情報量が足りなさすぎるのだ。僅かな情報からうんうんと考えて見たところで曖昧な結果しか生み出されないというのが一般人の脳の構造からして的確な答えだろう。
 それにしても、今日の奇妙な足取り。あれは一体何だったのか…。




 「…なあなあ、! ってばよ」
 「え、ああごめんごめん」必死になって私の肩を揺らすナルト。私の頭はがくんがくんと揺れて、脳みそが上下に震動するような感覚に陥る。視界がゆらゆら揺れた。私は揺れが収まったところで言葉を切り出した。「で、…なんだっけ」
 はあ、と大きなため息をついたナルトは「だーかーらー!」とまた説明し始める。


 「、最近元気が無いとかそんな風に見えるって聞いたんだってばよ」
 そんな風に見えていたのか、としみじみと思いながら続きを聞く。
 「で! オレなりに考えた結果なんだけど、一楽のラーメン食べれば元気になるかと思ってさ!」
 「ああ、」私は一楽ラーメンか、と思う。「最近食べてないから、いいかもしれない」
 「な? 一緒に食べに行こうかって誘おうと思って」

 「うん、じゃあ行こうか」
 「よっしゃー! じゃあどっちが先に一楽に着くか競争な!」

 ナルトは殆ど二つ返事に近い私の答えを聞くと、くるりと体を翻して一楽の方角へ勢いよく走り出しながら、こちらに向かって大きな声を出した。全く、子供っぽいなあ、とクスリと笑いながらその後を追いかける私。その競争に乗ってしまう私も十分子供っぽいわけだが、この際はそんな事は抜きにして。まったく彼の無邪気さには私も敵わないんだとか、思ったりして。


 「負けたほうがラーメン奢りだからな!」
 「聞いてない!」


 ナルトの一言を冗談でしょ、と笑い飛ばしながら彼に追いつこうと私も彼に向かって走る。ナルトは本気で走っているのかいないのか分からない速さだが、一般人の脚力に比べて彼は忍びであるがゆえにその脚力はずば抜けている。かく言う私も忍の一員として活躍している身なので、一般人に比べれば体力と脚力には自信があるほうだ。互いにおそらく本気を出さないなんとなくな走りで、それでもスピードはそこそこある追いかけっこで一楽までの競争。「負けないから!」とか後ろから笑い混じりに言ったら「追いつけるもんなら追い越してみろってばよ」なんてナルトのいたずらっぽい言葉が聞こえた。


 「それじゃあ遠慮なく!」
 私がちょっとスピードを上げて軽やかにナルトを抜かせば、彼は「あー! 大人気ねーってばよ」なんて後から叫んでいる。ほら抜かせって行った君が悪い、なんてけらけらと笑えば、ってばやっぱり笑ってたほうがいいってばよ、なんて聞こえてきた。やっぱりこうしているのが楽しいかもしれない。
 後から、ナルトが追いついてきた。




 最終的なデットヒートに達した末に、結局同着になった一楽ラーメンへの競争は両者折半と言う事でカタが付いた。
 割り勘したら同じ値段じゃないかとかそんなことはどうでも良くて、ただ楽しかったからよしという楽観的な私の考えなわけなのだけれど。そんな事はさておき競争以前から私の胸が、どきどきしてはちきれそうだったとかそんな事は内緒。










(20091023:ソザイそざい素材)そんなこんなで企画第一号。順番は無視してかいてます。浮かんだのから書くってのが鉄則!